よりパワフルに!よりグルーヴィーに!より多彩に! パワーアップした『インクレディブル・ファミリー』のサントラ盤が楽しすぎる!という話

ウォルト・ディズニー・ジャパン様からのご依頼で、
『インクレディブル・ファミリー』(18)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
音楽は前作『Mr.インクレディブル』(04)に続いてマイケル・ジアッキーノ。
もう1作目から14年になるんですね。。

ワタクシがこちらのお仕事を先方から頂いたのは、
本国でも公開が始まる前の頃でした。
それゆえ諸々の情報がまだ解禁になっていなくて、
とにかく情報が少なく、
それでいて締切スケジュールはタイトという、
なかなかハードなお仕事でした。

とはいえ情報が少ないからと言って、
映画のあらすじ部分で文字数を盛った文章でお茶を濁すのはいただけない。
さてどうしたものかとかなり悩みました。

ワタクシは『LOST』で4回、
『M:I:III』(06)、『スピード・レーサー』(08)、『カーズ2』(11)、
『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(11)、
『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(13)で合計9回ジアッキーノ作品のライナーノーツを書かせて頂いて、
まだブレイク前のジアッキーノに3回インタビューして、
ジアッキーノの天才作曲家ぶりを早いうちから日本のサントラリスナーの皆さまにプロモーションした自称”ジアッキーニスト”でもありますので、
過去のインタビュー記事を再利用させて頂いたり、
以前使えなかったインタビューの没ネタを引っ張り出してきたり、
映画のマスコミ試写の時にエンドクレジットの音楽情報を目を皿のようにして総チェックしたりして、
かなり気合いを入れて『インクレディブル・ファミリー』のライナーノーツを書かせて頂きました。

…というわけで、ワタクシの努力の成果はサントラ盤の差し込み解説書にてご確認頂くとして、
このブログではライナーノーツで書けなかったネタや、
ライナーノーツでの音楽解説とは違った視点から『インクレディブル・ファミリー』のスコアをご紹介しようかなと思います。

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『リディバイダー』のサントラは『Kill Switch』の名前で出てました、というお話。

先日『リディバイダー』(17)を観てきました。
「リディバイダーってナニ?」と思いましたが、
“Redivider”、つまり”Re-Divider”ということで「再分割機」ということらしい。

この映画のウリは「複製世界を一人称視点、現実世界を客観視点で描く映像ドラマ体感型クライシスムービー」ということなのですが、
正確には「回想シーンを客観視点」「現在進行中のドラマを一人称視点」で描くという感じでした。
主演のダン・スティーヴンスのご尊顔が拝めるのは回想シーンだけというのが難点ですが、
一人称視点の時も一応ダン様の声は聴けるし、
ARモニターにダン様の顔アイコンが時々表示されるので、
己のイマジネーションをフル活用すれば「ああ、顔が映ってないけどダン様が戦ってるんだなー」という気分になれます(たぶん)。

まぁハッキリ言ってB級SF映画ではあったのですが、
先日ツイッターでちょこっと書いた通り、
主人公がいきなりワケの分からない状況に放り込まれる展開とか、
大型船や電車、飛行機が吸い上げられて落下してくるビジュアルとか、
ドローンやガジェットのメカデザインとか、
個人的に好みの要素がいろいろあったのでそれなりに楽しめました。

で、その個人的に好みだった要素のひとつが、
Seven League Beatsというユニットの音楽でした。

 

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80年代・90年代の映画の拡張版サントラをいろいろ買いましたの巻。

去年は新旧サントラ盤が豊作だったなーという印象でしたが、今年も次から次にサントラの名盤がリリースされていて、片っ端からあれもこれもと買っていった結果、仕事場の棚の空きスペースがどんどんサントラ盤で埋まっていっている今日この頃です。

ワタクシはどちらかというと新しい映画音楽家の方々の作品を好んで買う傾向があるのですが、過去作品の完全盤や拡張盤などもいろいろ買ってます。
ワタクシの場合、映画を見始めたのが80年代半ばから90年代あたりなので、個人的に思い入れのある作品もその時期のものが多くて、80年代・90年代のサントラの拡張盤とか完全盤が出るとつい買ってしまうのです。

人によっては「え?この映画の完全盤を買うの?わざわざ高いお金を出して?」と思うような作品でも、好きな作曲家だったりするとコレクター根性を出してつい限定盤を買ってしまう。
ちなみに『キリング・ミー・ソフトリー』(02)のサントラ盤を買った時には「マジで買ったんですか?」と言われました(「パトリック・ドイルの音楽が好きなんだから別にいいでしょ」と思いましたが)。

…というわけで、今年の上半期に購入した拡張盤・完全盤は以下の通り。

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繰り返されるエレキギターのフレーズに男泣き必至。静かに熱い『オンリー・ザ・ブレイブ』の音楽

先日『オンリー・ザ・ブレイブ』(17)を観てきました。

今回は映画を観るより先にサントラを聴いておりまして、本作のジョセフ・トラパニーズの音楽は同じ消防士のドラマでも、ハンス・ジマーの『バックドラフト』(91)とはかなりタイプの異なるサウンドで、その音楽を聴いた印象から言っても「この映画、ハッピーエンドの英雄鐔ではなさそうだな」と思ったのですが、実際に本編を観てみたら当方の想像以上に悲しい結末でした。

さてそのジョセフ・トラパニーズという作曲家さん、ジョセフ・コシンスキー監督作品の常連作曲家でもあります。しかしながら『トロン:レガシー』(10)はダフト・パンクとの共同作曲とストリングス・アレンジ、『オブリビオン』(13)ではM83(アンソニー・ゴンザレス)との共同作曲とストリングス・アレンジという感じで、トラパニーズの仕事は(スコア製作への貢献度に比べると)二大エレクトロニカ・アーティストの名前の陰に隠れがちだった印象があります。

別な監督との仕事にしても、『ザ・レイド』(11)はリンキン・パークのマイク・シノダとの共同作曲だったし、『グレイテスト・ショーマン』(17)はミュージカル映画なので、どうしてもリスナーの関心は挿入歌に行ってしまってよほどのサントラマニアでなければスコアには関心を持たなかっただろうし、そのスコアもジョン・デブニーとの共同作曲だった。
『ストレイト・アウタ・コンプトン』(15)も映画の性質上ギャングスタ・ラップのほうが目立つので、やっぱりトラパニーズのスコアはサントラマニア以外にはあまり注目されなかった…と思います(ダウンロード版でスコアアルバムが出てます)。

 …とこのような状況が続いておりましたが、今回の『オンリー・ザ・ブレイブ』はトラパニーズ単独の仕事が存分に楽しめて、優れたアレンジャーでありメロディーメイカーでもある彼の才能を実感できるサントラ盤に仕上がっております。

Only The Brave (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music

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『アメリカン・アサシン』の音楽で重要と思われる2つのテーマ曲を読み解いてみる。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『アメリカン・アサシン』(17)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
音楽は『ゼロ・グラビティ』(13)のスティーブン・プライス。

ワタクシ、プライスのサントラ盤ライナーノーツは以前『ゼロ・グラビティ』(13)『フューリー』(14)も担当させて頂きまして、
日本盤未発売の『スーサイド・スクワッド』(16)も含めてこの方の音楽はかなり聴きこんでいるのですが、
今回もかなりの力作に仕上がっています。
登場キャラが多すぎた『スーサイド・スクワッド』よりも、
本作の方が引き締まったサウンドになっていて聴きやすいのではないか、というのが個人的な感想です。
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