映画『四月の魚』のサウンドトラックアルバムに胸をときめかせたあの頃のこと。

4月1日にWOWOWで『四月の魚』(86)の放送があるということで、先月末は久々にサントラ盤を聴いて過ごしました。

四月の魚 サウンドトラック +2(amazon)
四月の魚 サウンドトラック +2(TOWER RECORDS)

映画が公開になった1986年と言えば、自分はまだ小学生。
YMOリスナーとして幸宏さん派だった母に連れられて、散開ライブや「WILD & MOODY」のライブなどに行ったりはしていたものの、この時の自分は「映画館で映画を観る」という習慣がほとんどありませんでした(アニメ映画をたまに観るぐらい)。洋画はもっぱらテレビの「日曜洋画劇場」や「金曜ロードショー」などで観る感じでした。
そんなわけで、母は自分が学校に行っている間にささっと『四月の魚』を観てきたのでした。

学校から帰って来て母に「(映画)面白かった?」と尋ねたら、「幸宏さんはかわいかったけど、観ていてちょっと恥ずかしかった」と答えていたのをよく憶えています。「なんで?」と聞いたら「演技がヘタだった」という実にストレートな感想が返ってきました。
その時は「ふーん」という感じでしたが、後年(高校生の頃だったと思う)映画を観たら納得しました。

…うん、確かに観ていてちょっとツラインダ…。

ああ、幸宏さんごめんなさい…。

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『フォロウィング』HDリマスター版が4月公開らしいので、以前買ったサントラ盤をご紹介します。

『オッペンハイマー』(23)の興行的/批評的成功を受けたこともあるのか、クリストファー・ノーラン監督のデビュー作『フォロウィング』(98)のHDリマスター版が4月に日本公開になるそうです。

自分の場合、確かこの映画は衛星放送で観たような記憶があります。
近所の店でソフトを取り扱っていなかったから、ビデオ/DVDレンタルでは観ていないはず。
『メメント』(00)か、あるいは『バットマン ビギンズ』(05)のBS/CS初放送か何かで、ノーラン監督作品の特集放送があったときにこの映画もラインナップに加わっていて、その時に観たのだと思います。

「尾行癖のある自称”作家志望”の男が、狡猾な男にそそのかされて尾行/家宅侵入のスリルに魅せられていき、やがてトラブルに巻き込まれてドツボにハマる」というお話で、観ていてちょっと不快というか、「まあ主人公も自業自得よね…」と思いながら観ていたものです。
ちなみに主人公をインモラルな世界に引きずり込む怪しい男の名前が、『インセプション』(10)の主人公と同じ”コブ(コッブ)”というのはノーラン信者の間でつとに有名。

ストーキング癖のある主人公には全く共感できませんでしたが、ストーリーへの没入感はすごかったと記憶しています。
シャッフルされた時系列、意味深長なモノクロ映像、勿体つけたような会話、嘘と陰謀が幾層にも重なったプロットなどなど、ノーラン映画の特徴がデビュー作に全部詰め込まれている。ノーランにはこのままサイコロジカルスリラー路線で行ってほしかったなぁ…。

当時の自分はノーラン映画にとても関心があり、初期作品の音楽を担当していたデヴィッド・ジュリアンのスコアにも興味があったので、『フォロウィング』もしっかりサントラ盤を買いました。

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最近買ったサントラ盤 『ブラッドシンプル』『ブルーベルベット』デラックス・エディション

「最近」という言葉を使うには少々日にちが経ってしまいましたが、Varese Sarabandeから数量限定で発売になった『ブラッドシンプル』(84)と『ブルーベルベット』(86)のデラックス・エディション版サントラを買いました。

『ブラッドシンプル』はVareseから『赤ちゃん泥棒』(87)とのカップリングで1987年にサントラ盤が出ていて、その時にはカーター・バーウェルのスコアを20分くらい収録していました。
で、今回のデラックス・エディションはオリジナルのマルチトラック・セッション・テープから新たにミックスを施した全13曲・約35分のスコアを収録しているとのこと。この微妙な収録時間が悩みどころでした。

「通常盤から15分増えた収録時間35分のコンパクトなサントラ盤に6,000円前後を出すのもなぁ…」と思い、昨年は購入を見送ってしまいました。
しかしザ・シネマで『ブラッドシンプル ザ・スリラー』の放送があり、放送期間中に何度も映画を観ているうちに「やっぱりバーウェルの音楽いいな」と思い、結局買うことにしたのでした。

BLOOD SIMPLE (The Delux Edition Original Motion Picture Soundtrack) – TOWER RECORDS
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BANGER!!!で書いた『テルマ&ルイーズ』音楽コラムの補足

2月16日から『テルマ&ルイーズ』(91)の4Kレストア版の上映が始まるということで、映画情報サイト「BANGER!!!」で音楽紹介コラムを書かせて頂きました。

実はブラピの出世作『テルマ&ルイーズ』が4Kリバイバル上映! アカデミー賞受賞の傑作ロードムービーを彩るハンス・ジマーの音楽 | https://www.banger.jp/movie/110781/ #BANGER

当初はハンス・ジマーのスコアをメインに紹介して、挿入歌は数曲ざっくりご紹介すればいいかな…と考えていたのですが、映画本編をじっくり観直したところ、挿入歌の使い方もかなり凝っていたので「これは出来る限りきちんと紹介しなきゃダメだな」と思い直し、結局挿入歌もかなりの字数を割いてご紹介することになりました。

最近疲れているので少し楽をさせて頂こうと思ったのですが、そんなにうまくは行かないのでありました。

BANGER!!!のコラムで重要なことはほとんど書いたので、当方のブログではもう少し補足したほうがいいかなというネタをいくつかご紹介いたします。

Thelma and Louise – Original Motion Picture Score (TOWER RECORDS)

1990年代当時のハンス・ジマーについて

BANGER!!!のコラム内で「90年代初頭のジマーは冷遇されていたこともあった」と書きましたが、『ドライビング Miss デイジー』(89)で一体何があったのか。このあたりのところをもう少し詳しくご説明したいと思います。

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BANGER!!!で書いた『ボーン』シリーズ音楽コラムの補足(『ジェイソン・ボーン』編)

年末年始にムービープラスやBS12、WOWOWなどで『ジェイソン・ボーン』シリーズ(あるいは『ボーン』シリーズ)の一挙放送があったので、それに合わせて映画情報サイト「BANGER!!!」でシリーズの音楽を紹介するコラムを書きました。

続編製作の噂も? 紆余曲折『ボーン』シリーズの音楽世界に迫る! ~『アイデンティティー』からスピンオフまで~ | https://www.banger.jp/movie/108228/

今回は『ジェイソン・ボーン』(16)について…なのですが、BANGER!!!のコラムで重要なことはほとんど書いてしまったし、それ以前にサントラ盤の差込解説書でもいろいろ書いていたので、ブログでは簡単に補足する程度にさせて頂きます。

JASON BOURNE Original Motion Picture Soundtrack – amazon

『ボーン・アルティメイタム』(07)で一応シリーズ完結ということになっていたし、スピンオフの『ボーン・レガシー』(12)もシリーズ継続にゴーサインを出すには微妙な興行成績だったので、もう続編はないかなと思っていました。

もしかしたら「やっぱりスピンオフじゃなくて本家の続編を作らなきゃダメだ」みたいな判断で続編を作るかもしれないけれども、アニメ映画の作曲中心にシフトしたジョン・パウエルが復帰するかどうかは微妙な線だろうなとも考えておりました。ポール・グリーングラス監督の『キャプテン・フィリップス』(13)の音楽もパウエルではなくヘンリー・ジャックマンでしたから。

それでもこうして本家の続編が作られて、「愛妻が亡くなる」という不幸を乗り越え、パウエルもシリーズの音楽担当に復帰したのでした。

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