DARK SHADOWS(音楽について)

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ジョニー・デップ×ティム・バートンのタッグ作品という事で、それなりにスマッシュヒットが見込める映画と判断させたせいか、『ダーク・シャドウ』(12)のサントラは劇中使われた歌モノを収録したコンピ盤と、ダニー・エルフマンのスコア盤の2種類がリリースされました。

しかもスコア盤は配信のみとかではなく、ちゃんとしたプレスCDでのリリース。素晴らしい。

エルフマンの音楽は、オーケストラとコーラス隊、打楽器をドコドコ鳴らす「いつもの」スコア。滑稽さは抑えめにして、割と本格的なゴシックホラー音楽を聞かせてくれています。メインテーマのメロディーも、いかにもエルフマンらしい感じ。正確には「ティム・バートンと組んだ時のエルフマンらしいメロディー」と言うべきか。

本編を観る前にこのアルバムを聴いていたら、「『ビートルジュース』(88)みたいな映画なのかな?」なんて間違った先入観を持たずに『ダーク・シャドウ』の世界にどっぷり浸かれたのかもしれません。どうでもいい事ですが、アルバムのトリを飾る”We Will End You!”のイントロのリズムがQueenの”We Will Rock You”に似ている(ように聞こえる)のはワザとでしょうか。

活劇タッチの大仰なスコアもよいのですが、バーナバスとジョゼット(18世紀の元恋人)/ヴィクトリア(現代のワケあり家庭教師)の悲恋を予兆させる物悲しいスコアも素晴らしい出来です。

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追悼 デニス・ホッパー

dennis hopper

現地時間の5月29日朝、俳優のデニス・ホッパーが亡くなりました。
享年74歳。合掌。

ニュース映像で痩せ細った姿を見た時から覚悟はしていたけれど、
イーストウッドが80歳になっても精力的に映画を撮っている事を
考えると、まだまだホッパーには「永遠の不良中年」として活躍して
ほしかったな、とも思う。

とはいえ、若い頃からドラッグ&アルコール漬けの退廃的な生活を
送っては入退院を繰り返していたから、歳を取ってからその反動が
来たのかなと思うと、「その割には長生きしたほうなんじゃないだろ
うか」という気もするのです。

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『ニューヨーク1973 / LIFE ON MARS』のかわいい婦警さん

多分オリジナルのUK版『LIFE ON MARS』が好きな人には評判が悪いんだろうけど、
自分はアメリカのリメイク版『ニューヨーク1973 LIFE ON MARS』が好きで、毎週欠か
さず初回放送を観ております。

だって、あのハーヴェイ・カイテルが鬼警部補ジーン・ハント役でレギュラー出演して
るんだから、こりゃ観るしかないわな。相変わらずコテコテの演技で笑わせてくれるし。

横柄で濃い顔のレイ(『グッドフェローズ』(90)でスパイダー役を演じたマイケル・イン
ペリオリ)、気の弱そうなクリス(ジョナサン・マーフィー)、時折見せる切ない表情が
不条理な出来事に直面した男の悲哀を見事に物語っている主人公サム・タイラー
役のジェイソン・オマラなど、キャラもキャスティングも絶品。ヤクザと紙一重のNY
市警のデカを活き活きと演じてます。2008年と1973年という時代のギャップを
ネタにしたトークも面白い。

「ケータイが要るんだ! (I need my cell!)」
「何を売るって? (You need to sell what)」

なーんてベタなジョークもサラリと決まって最高。やっぱりタイムトラベルものは
未来より過去の方が面白い。

そんな僕の一番のお気に入りは、アニー・ノリス役のグレッチェン・モルなんだなぁ。

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17歳の肖像(An Education)

an education

この映画の原題は『An Education』。まぁ直訳すればズバリそのまま「教育」でしょうか。そのまま学校での”教育”を意味する一方、人生で挫折を味わったり辛い目に遭ったりする事もまた「学校では教えてくれない”教育”」なのですよ、というような事を描いた物語なんですが、何かそういうテーマがちと伝わりにくい邦題になってしまったなーという感じ。

『17歳のカルテ』(99)とか『17歳の処方箋』(02)とか『アイコ十六歳』(83)とか、日本人はこういう17歳とか16歳って年齢のタイトルに惹きつけられるものがあるんだろうか。「17歳の何たら」というタイトルが既に2つあるのが痛い。

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『MILK』の音楽について

お待たせしました(別に待ってないか)。
今回は『ミルク』(08)のサウンドトラックについて。

このところガス・ヴァン・サントは既製曲のコンピレーションを中心とした
サントラを作っていたのですが、『ミルク』では久々にオリジナル・スコアが
つきまして、ダニー・エルフマンとタッグを組んでおりました。

1998年の『サイコ』以来の顔合わせだなぁ、と思ったのですが、あの映画の
音楽はバーナード・ハーマンの曲を完全カヴァーした構成だったので、
エルフマン書き下ろしのオリジナル曲となると、前年の『グッド・ウィル・ハン
ティング 旅立ち』(97)以来という事になるわけです。

今回の『ミルク』では、あのエルフマン独特のケレン味をぐっと抑えたシックな
装いのオーケストラ・サウンドを披露しています。
ハーヴィー・ミルクのパーソナリティをそのまま反映させたような、全体的に
優しげで控えめな感じと申しましょうか。切なくてやるせないけれど、どこか
希望を感じさせてくれるサウンドです。

特に23曲目から25曲目の展開は、映画本編を見た後に聴くとかなり泣けます。
実際、久々に聴いたら映画の終盤のシーンを思い出して目頭が熱くなりました。

あの名作『シザーハンズ』(90)のラストシーンのような、静かな感動を呼び
起こしてくれる名曲というか何というか。
やっぱりスラムドッグなんたらより、『ミルク』が作曲賞を獲るべきだった
ような気がします(今更ですが)。

アルバムにはエルフマンのスコア22曲に加えて、70年代当時のヒット曲が
6曲収録されています。聴き所はSylvesterの「You Make Me Feel (Mighty
Real)」でしょうか。このシルヴェスターという人、いわゆるドラァグ・パフォー
マーでして、ゲイのディスコシンガーだったんですな。で、ミルクの誕生
パーティーで実際にこの曲を歌った事もがあるのだそうです。

映画でもそのシーンがそっくりそのまま再現されていて、ケバケバしい
格好をした歌手がファルセット・ヴォイスでこの曲を熱唱しておりました。
シルヴェスター本人は1988年にAIDSで亡くなっているので、映画に
登場するのは彼に扮したそっくりさんなのですが。

差別や偏見と闘うマイノリティの人々の物語に、Sly & The Family Stoneの
「Everyday People」を持ってくるあたりも実にニクい選曲です。

ただ、スウィングル・シンガーズの「プレリュード第7番(バッハ)」をあの
シーンに持ってくるというのは、本気でやっているのか笑いをとるために
やっているのか、ちと判断しかねます。ガス・ヴァン・サントも屈折した
ユーモアセンスの持ち主だからなぁ。ま、このあたりは映画を観た人の
感性にお任せしますって事ですかね。

CDにはその他にもDavid Bowieの「Queen Bitch」やThe Hues Corporationの
「Rock the Boat」、The Sopwith Camelの「Hello, Hello」を収録。
ハズレなしのナイス選曲です。

それぞれのアーティストについてはCDのライナーノーツでざざーっと
紹介させて頂きましたので、ぜひぜひご覧頂ければと思います。

サウンドトラック盤はユニバーサルミュージックより今月15日発売。
慈愛に満ちたエルフマンの音楽をご堪能あれ。

『ミルク』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ダニー・エルフマン & Various Artists
品番:UCCL1140
定価:2,500円