『ブルーベルベット』のテーマソング”Mysteries of Love”はどのような経緯で生まれたのかというお話。

2月7日から『ブルーベルベット』(86)の4Kリマスター版上映があるということで、映画の音楽についてもう少し何か書きたいと思います。

Blue Velvet (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music

ちなみに『ブルーベルベット』のデラックス・エディションのサントラ盤は以前ブログでご紹介済みです。

そのときはリマスター版上映があるなんて思いもしなかったので、同時期に買った『ブラッドシンプル』(84)のデラックス・エディションのサントラとまとめてざっとご紹介したのですが、リマスター版の上映のタイミングに合わせて、以前書ききれなかったネタでも書こうかなと思った次第です。

そのネタというのは、ジュリー・クルーズが歌うテーマソング”Mysteries of Love”についてです。

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デイヴィッド・リンチは映画における「音楽」と「音響」と「ノイズ」の楽しみ方を教えてくれた…と思う。

今年も年明け早々いろいろな(悪い)ことが起きすぎて気が滅入っているところ、デイヴィッド・リンチ監督の訃報が入ってしまいました…。

現地の記事だと、リンチは南カリフォルニアの山火事のため自宅から実娘の家に避難したらしいので、肺気腫で弱っているところにこれらの出来事が重なって、健康状態が悪化したのではないかと思われます。弱り目に祟り目というやつでしょうか。気の毒すぎて胸が痛くなります。避難先が家族(実娘)の家で、そこで息を引き取ったというのがせめてもの救い…なのかもしれません。

「リンチさん、タバコ吸い過ぎだよ…。喫煙を控えていればもっと長生きできたかもしれないのに…」

…と当初は思ったものの、少し冷静になって考えてみると、好きなもの(タバコ、コーヒー、ドーナツなど)を好きなだけ嗜んで、流行やプロデューサーに迎合せず自分の撮りたいように映画を撮り、絵画制作や音楽活動にも打ち込み、4度の結婚/離婚を経験…と自分のやりたいように生きてきたわけで、悔いのない人生だったのではないかとも思います。

いまの世の中、長生きしていてもロクなことがなさそうな雰囲気になってきているので、リンチのように「自分のやりたいことをやって気ままに暮らす」という生き方もいいのかもしれないなと思いました。そういう意味ではリンチが羨ましい。孤高の映像作家/アーティストのご冥福をお祈りいたします。

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ブライアン・フェリー「Retrospective: Selected Recordings 1973-2023」デラックス・ボックスセットを聴いて年末年始を過ごしたお話。

自分はブライアン・フェリー(とロキシー・ミュージック)のオリジナルアルバムは全部持っているし、フェリーさんのレア音源も企画盤やサントラでかなり集めている方だと思うので、公式サイトでアナウンスがあったCD5枚組+フォトブックのボックスセットは、果たして買うべきかどうかと正直かなり悩みました。

しかしDISC FIVEのレア音源集の魅力には抗えず、それ以上にフェリーさんの音楽を40年近く追ってきた身としては、これはコレクションとして買っておくべきアイテムなのだろうと思い直し、割と早い時期に予約注文した次第です。

Retrospective: Selected Recordings 1973-2023 [CD/Super Deluxe Boxset] – amazon
Retrospective: Selected Recordings 1973-2023 (Super Deluxe Boxset) [5CD+BOOK]- TOWER RECORDS

その後発売日(というか日本国内ショップの入荷日)が遅れたり、お届け予定日の数日前に受取先のコンビニがまさかの1週間臨時休業に入ってしまったり…と予期せぬ事態に見舞われたものの、紆余曲折を経て11月下旬には当方の手元に製品が届きました。

ボックスセットといっても先頃発売になった「マムーナ」のCD3枚組デラックス・エディションぐらいと思っていたのですが、ライナーノーツつきフォトブックが気合いの入った出来映えだったため、当方の想像以上に現物はサイズが大きかったし重かった。

豪華ブックレットには各曲ごとに演奏に参加したミュージシャンの名前が記載されているので、映画のサントラでもスタッフクレジットまでつぶさに目を通す自分としては、こういう細かな情報が実に有難い。

収録曲は全て書き起こしするのが面倒なので、画像をご覧下さい。

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『フランシス・F・コッポラ -終わりなき再編集-』で上映される作品のサントラ盤を集めてみた話 その2:『ハメット』『アウトサイダー』

11月29日からコッポラ作品の4Kレストア版上映企画『フランシス・F・コッポラ-終わりなき再編集-が始まるので、上映作品4タイトルのサントラ盤を集めてみました。

『カンバセーション…盗聴…』(74)
『ワン・フロム・ザ・ハート』(81)
『ハメット』(82)
『アウトサイダー コンプリート・ノベル』(83)

…の4作品。

前回のブログで『カンバセーション』と『ワン・フロム・ザ・ハート』のサントラをご紹介したので、今回は『ハメット』と『アウトサイダー』について書きたいと思います。

『ハメット』

Hammett Original Motion Picture Soundtrack – amazon music

先日久々にDVDで本編を観たのですが、いま改めて観てもこの作品は「ヴィム・ヴェンダースが撮った映画」というより「製作総指揮のコッポラが撮った映画」という印象を受けました。
ドイツの俊英ヴェンダースをハリウッドに招いて映画を撮らせてはみたものの、コッポラと方向性の違いで揉めて製作現場がゴタゴタしていたとか。

それではこの映画が失敗作かというと、(当時の評価はさておき)個人的には案外そういう感じでもなく、スローテンポで進むドラマ(強いて言えばこのへんがヴェンダース的という気もする)もいい味を出しているし、最近はこういう古典的なノワール映画を作ってくれなくなったので、結構新鮮な気持ちで観られました。

そして何より素晴らしいのがジョン・バリーのジャズ音楽。「クラリネットとピアノ」をメイン楽器に据えたのが実に秀逸なチョイスです。
トランペットをメイン楽器に使うとゴールドスミスの『チャイナタウン』(74)と比較されてしまうし、フレデリック・フォレストが体現したハメットの独特な物腰と雰囲気には木管楽器のほうが合っている気がします。
オーディオでサントラを聴いていると、部屋の奥の方から聞こえてくるようなクラリネットの「奥行きのある音」が実に味わい深くてよい感じです。

DVDの裏面に「サックスの悲しげな音楽」と書かれていますが、メインテーマのことを言っているならこれはサックスではなくクラリネットだと思うんですけどね…。

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『フランシス・F・コッポラ -終わりなき再編集-』で上映される作品のサントラ盤を集めてみた話 その1:『カンバセーション…盗聴…』『ワン・フロム・ザ・ハート』編

11月29日からコッポラ作品の4Kレストア版上映企画『フランシス・F・コッポラ-終わりなき再編集-が始まるので、上映作品4タイトルのサントラ盤を集めてみました。

『カンバセーション…盗聴…』(74)
『ワン・フロム・ザ・ハート』(82)
『ハメット』(82)
『アウトサイダー コンプリート・ノベル』(83)

別に「サントラ盤を集めてみた」と言っても、このブログを書くためにわざわざ買い揃えたわけではなく、以前から所有していたものを仕事場に持ってきただけです。

企業様から依頼を受けて音楽解説を書くお仕事であれば、詳細かつ丁寧に1作ずつ解説原稿を書いていくところですが、今回は自分のブログでご紹介する程度なので、簡単に聴きどころをご紹介する程度とさせて頂きたいと思います。
とはいえ4作品を一気にご紹介するとテキストが長くなってしまうため、2回に分けて書きます。

『カンバセーション…盗聴…』

The Conversation OST (2023 Remaster) – amazon
The Conversation OST (2023 Remaster) TOWER RECORDS

この映画の音楽(およびサントラ)については、以前のブログで比較的詳しくご紹介済みでした。

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