『刑事グラハム/凍りついた欲望』のブルーレイを買ったので拡張版サントラも自作したお話

先日、遅ればせながら『刑事グラハム/凍りついた欲望』(86)のブルーレイを買いました。

以前WOWOWで放送した時に録画したからBDは買わなくてもいいかなと思っていたのですが、マイケル・マン好きを自認する者としては購入しておくべきなのではないか、購入見送ってその後BDが欲しくなった時、もう生産終了になっていて買えなくなるパターンに陥るのではないか、などと考えた結果、やはり今のうちに買っておこうということになってサクッと購入しました。

刑事グラハム/凍りついた欲望 [Blu-ray] – amazon

そしたらこれが買って大正解だったのです。

まず当方の思った以上に映像特典が充実していた。
ウィリアム・ピーターセン、トム・ヌーナン、ジョーン・アレン、ブライアン・コックス、撮影監督ダンテ・スピノッティのインタビューに加えて、音楽担当者(スコア作曲のザ・レッズとミシェル・ルビーニ、楽曲提供したバンドメンバー)のインタビュー映像を収録していたんですね。
短くても15分前後、ブライアン・コックスのインタビューに至っては40分近く喋ってくれている。音楽担当者のインタビューも40分強あって、ワタクシのような映画音楽ライターの仕事をしている人間にとっては実に参考になる話が聞けました。

そしてインタビューで語られる内容がどれも大変面白い。これは是非実際に映像を観て頂きたいので、どんなことを話していたのかはここでは書きません。
ただひとつだけ書かせて頂くならば、スコア作曲者や楽曲提供したバンドメンバーが『刑事グラハム』の音楽を絶賛しているのに、ブライアン・コックスが「もしこの映画をいま上映するなら音楽は差し替えたいな」と言っていたのはちょっと笑ってしまいました。
まあその理由が「80年代という時代を感じさせてしまうから(=いま聴くと古臭さを感じるから)」というのはよく分かるし、「その一方で、この音楽が我々をあの時代に誘ってくれる」と言っていたのも興味深い分析でした。何だかんだでコックスもこの映画が好きなんだな。彼が語ってくれるエピソードはどれも資料的価値が高いです。

あとディレクターズカット版本編が特典として収録されているのも嬉しかった。
劇場公開版が120分でディレクターズカット版は124分だから、収録時間的にはそれほど追加映像はないのだけれども、映画公開から30年近く経って(←映像特典のコピーライト表記から推察すると2016年のようです)ディレクターズカット版が観られるというのは実にありがたいものです。

そんなわけで久々に『刑事グラハム』本編を堪能したので、その勢いで拡張版サントラも自作してみました。

続きを読む

この日を待っていた…。『スカーフェイス』2枚組拡張盤サントラを買ったお話。

La-La Land Recordsから全世界5,000枚限定で発売になった『スカーフェイス』(83)2枚組エクスパンデッド盤サントラを買いました。この日が来るのをどんなに待ち続けたことか…。

映画の公開は1983年。通常盤サントラはジョルジオ・モロダーのスコア2曲に挿入歌8曲のコンピレーション盤で、モロダーのスコアを聴きたかったら、映画本編を観て楽しむしかないという状況が長いこと続いておりました。

映画公開20周年になったら完全盤サントラが出るのではないか、いや30周年目にはさすがに何か出すだろう…というように、映画公開から10年単位の節目に完全盤サントラの発売を待ちわびていたのですが、40周年を間近に控えた39年目にして遂に今回の2枚組サントラがリリースされたというわけです。たぶん、権利関係とかいろいろ厄介だったんでしょうね…。人気作だし。

コロナ禍は一向に収束することなく第7波に突入、ウクライナとロシアの戦争も長引いているし、日本国内も物価高に電力不足、地震も頻発しているし、治安もどんどん悪くなっていて、もう長生きしていてもいいことなんてないんじゃないかと思うようになってきましたが、こうして宿願だった『スカーフェイス』の2枚組拡張盤サントラが手に入ったので、ひとつだけいいことがあったなという感じです

SCARFACE Expanded Motion Picture Soundtrack (TOWER RECORDS:輸入盤)
SCARFACE Expanded Motion Picture Soundtrack (TOWER RECORDS:輸入盤国内流通仕様)
SCARFACE Expanded Motion Picture Soundtrack (amazon:輸入盤国内流通仕様)

続きを読む

1980年代~1990年代のケビン・コスナー主演作のサントラ盤をいろいろ買った話(『リベンジ』『フィールド・オブ・ドリームス』『追いつめられて』)

連休中、実家の母が「久しぶりにケビン・コスナーの『リベンジ』(90)を観たくなった」と言ってきました。
そういえば自分もこの映画を久しく観ていなかったなと思い、実家にDVDを送る前に本編を鑑賞したところ、「見応えのある復讐と因果のドラマだなぁ」とのめり込んで観てしまった次第です。

トニー・スコットというと「『トップガン』(86)の監督」というイメージですが、あれはどちらかと言えば「ジェリー・ブラッカイマーの映画」であって、誰が監督してもああいう感じの内容になったのではないかと思います(室内の陰影のある映像がスコット兄弟っぽいな、という程度で)。
のちの『トゥルー・ロマンス』(93)や『マイ・ボディガード』(04)などを観ると、トニー・スコット”らしさ”が出ているのはむしろ『リベンジ』のほうだった気がします。

…とまぁそんなわけで本編を観ていたらジャック・ニッチェの音楽が耳に残ったので、何年か前にスコア盤が発売になっていたことを思い出し、買えるかどうか調べてみたら幸いまだ在庫がありました。もちろん、すぐさま購入しました。

Revenge: Original Motion Picture Soundtrack – amazon
Revenge: Original Motion Picture Soundtrack – TOWER RECORDS

『リベンジ』の音楽は、物語の舞台であるメキシコの雰囲気を内包したシンセスコア。
パンパイプのような音色が聞こえますが、おそらくサンプリング音源ではないかと。
愛のテーマの流麗なメロディに心を奪われます(ちょっと『ナイルの宝石』(85)の愛のテーマっぽくもある)。ギター演奏は名手トミー・テデスコでした。

続きを読む

最近買ったサントラ盤のお話:『THE BATMAN -ザ・バットマン-』『ヴィデオドローム』『アイアン・ジャイアント』(デラックス盤)

最近というには少々日にちが経ってしまったものもありますが、先月から今月にかけてこのようなサントラ盤を買いました。

その1:『THE BATMAN -ザ・バットマン-』(22)

コロナ禍で映画館へ行かなくなっているので、映画本編を観るのは当分先(=家で観られるようになってから)になるものの、サントラ盤は先に買っておきました。
なぜなら以前ブログでご紹介した『マトリックス レザレクションズ』(21)のサントラ盤と同じように、CDプレス盤で買えるのはランブリング・レコーズさんの初回導入分だけだったから。案の定、CDプレス盤は早い段階で売り切れてしまいました。

音楽担当はマイケル・ジアッキーノ。
ものすごくダークで重々しい音楽でした。
これはもうホラー映画の劇伴と言っても差し支えない。
その一方で、ヒーロー映画(ダークヒーロー映画)らしいリスナーを高揚させる瞬間も随所に用意されている。ジアッキーノ渾身の傑作スコアでした。

ジアッキーノはシンセとかドラムループを基本的に使わないタイプの作曲家なので、そういう意味ではダニー・エルフマンのバットマン音楽に回帰したとも言えるのかな。
今回の『THE BATMAN』のほうがコミックス的なノリも抑えめで陰鬱なトーンになってますが。

続きを読む

BANGER!!!で書いた『リーサル・ウェポン』音楽コラムの補足的なお話

ムービープラスで『リーサル・ウェポン』シリーズの一挙放送があるということで、
BANGER!!!でシリーズの音楽紹介のコラムを書きました。

クラプトンやスティング、ハリスンらロック界のレジェンドが集結!『リーサル・ウェポン』シリーズは音楽もスゴかった
https://www.banger.jp/movie/74932/

マイケル・ケイメンは自分の好きな映画音楽家のひとりなのですが、2003年に亡くなって約19年の時が経ち、近年は彼の音楽について語られる機会がめっきり少なくなったような気がしました。
そんな中、3月に『リーサル・ウェポン』シリーズの一挙放送があるということで、これはBANGER!!!でケイメンの音楽について書く絶好の機会ではないかと思い、上記のコラムを書くに至ったというわけです。

それにワタクシは何年も前にLa-La Land Recordsから数量限定でリリースになった8枚組完全版サントラを購入したので、これを仕事に活用しない手はないだろうとも思いました。

『リーサル・ウェポン』の音楽コラムを書くに当たって、映画本編をしっかり観直して、毎日のようにサントラ盤を聴きましたが、久々にケイメン×クラプトン×サンボーンのスコアを聴いて、「やっぱりこのシリーズの音楽は面白いな」と実感しました。

『リーサル・ウェポン』シリーズの音楽を一言で表現するなら「ロックなスコア」ということになるわけですが、近年ブライアン・タイラーやタイラー・ベイツ、ハンス・ジマーとその一派が作曲するような「ロックなスコア」とは一線を画するサウンドなんですね。


彼らの「ロックなスコア」が「オーケストラとギター、ドラムスなどのロックサウンドが渾然一体となった音楽」なのに対して、『リーサル・ウェポン』のそれは”渾然一体”というよりも、「ケイメンのオーケストラ音楽とクラプトンのグルースギター、サンボーンのフュージョン系サックスが並列で演奏され、それらが絶妙なバランスで一体感を保っている」という感覚に近い。
それぞれがジャムセッションのごとく奔放に演奏しているのだけれども、バラついた印象がなく、ひとつの劇伴としてきちんと纏まっている感じ。このあたりは編曲の巧さなのでしょう。エリック・クラプトンとデヴィッド・サンボーンの個性の強い演奏を、ここまで上手に使いこなした映画音楽家は、ケイメン以外いないかもしれないと思ったほどです。

さて、BANGER!!!のコラムで書ききれなかった小ネタは以下のような感じ。

続きを読む