デイヴィッド・リンチは映画における「音楽」と「音響」と「ノイズ」の楽しみ方を教えてくれた…と思う。

今年も年明け早々いろいろな(悪い)ことが起きすぎて気が滅入っているところ、デイヴィッド・リンチ監督の訃報が入ってしまいました…。

現地の記事だと、リンチは南カリフォルニアの山火事のため自宅から実娘の家に避難したらしいので、肺気腫で弱っているところにこれらの出来事が重なって、健康状態が悪化したのではないかと思われます。弱り目に祟り目というやつでしょうか。気の毒すぎて胸が痛くなります。避難先が家族(実娘)の家で、そこで息を引き取ったというのがせめてもの救い…なのかもしれません。

「リンチさん、タバコ吸い過ぎだよ…。喫煙を控えていればもっと長生きできたかもしれないのに…」

…と当初は思ったものの、少し冷静になって考えてみると、好きなもの(タバコ、コーヒー、ドーナツなど)を好きなだけ嗜んで、流行やプロデューサーに迎合せず自分の撮りたいように映画を撮り、絵画制作や音楽活動にも打ち込み、4度の結婚/離婚を経験…と自分のやりたいように生きてきたわけで、悔いのない人生だったのではないかとも思います。

いまの世の中、長生きしていてもロクなことがなさそうな雰囲気になってきているので、リンチのように「自分のやりたいことをやって気ままに暮らす」という生き方もいいのかもしれないなと思いました。そういう意味ではリンチが羨ましい。孤高の映像作家/アーティストのご冥福をお祈りいたします。

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新たな「作業用BGM」誕生の予感…。『wipE’out” CoLDSToRAGE: The Zero Gravity』サントラ盤

昨年末、某ショップのワゴンセールで掘り出し物のサントラ盤がないかな~と地道に検索していたところ、ひょんなことから『wipE’out” CoLDSToRAGE: The Zero Gravity』というアルバムを見つけました。

wipE’out” CoLDSToRAGE: The Zero Gravity SOUNDTRACK – amazon music
Wipeout: The Zero Gravity Soundtrack (CD) – TOWER RECORDS

もはや説明不要ですが、『ワイプアウト』(95)はプレイステーション/セガサターンで発売されたシグノシス社開発の近未来レースゲーム。
最大の特徴はマシンにタイヤがなく、反重力テクノロジーで地上から数メートル浮遊しているということ。SFCの『F-ZERO』(90)では再現できなかった「路面からフワフワ浮いて超高速で疾駆する機体を操る」感覚が新鮮なゲームでした。
「大味」「難易度が異様に高い」「無駄に濃い」というイメージだった「洋ゲー」への先入観を一変させる作品でもありました。時期的に『デストラクションダービー』(95)や『ESPN ストリートゲームス』(95)などと共にプレイステーションで「洋ゲー」推しが始まっていた頃かな。『ワイプアウト』は一部で「浮きゲー」とも言われていたような記憶があります。

で、『ワイプアウト』に話を戻しますと、このゲームは「音楽」と「デザイン」も注目を集めました。
デザイナーズ・リパブリックによるキッチュでスタイリッシュなアートワークと、ケミカル・ブラザーズやレフトフィールド、オービタルらが提供した当時最先端のテクノ/ハウスミュージックが、「ちょっとでも壁にぶつかったら容赦なく大減速」というゲームシステムにヒリヒリするような緊張感と不思議な高揚感をもたらしたものです(ちなみに続編の『XL』は当たり判定が緩和されて「コーナリングで壁面をシャリシャリ掠って曲がる快感」が生まれました)。『リッジレーサー』(93)と並んで、ゲーム音楽がクラブミュージック界隈とのリンクを果たした記念碑的作品でもありました。

Wipeout 2097 The Soundtrack – amazon

続編『ワイプアウトXL』(96)はサントラ盤が発売になっていたものの、第1作はサントラ未発売。
奥の手としてゲームソフトのCD-ROMをオーディオ機器にかければ収録曲が聴けますが、当方は第1作のソフトが手元にないので(当時買ったはずなのに…)それも叶わず。そんな中見つけたのが前述の『wipEout CoLDSToRAGE: The Zero Gravity』でした。

調べてみると2023年発売だったようで、CD版のサントラはほぼ在庫がなくなっているような状況。これは買わねばと思い、速やかにオーダーしました。

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ブライアン・フェリー「Retrospective: Selected Recordings 1973-2023」デラックス・ボックスセットを聴いて年末年始を過ごしたお話。

自分はブライアン・フェリー(とロキシー・ミュージック)のオリジナルアルバムは全部持っているし、フェリーさんのレア音源も企画盤やサントラでかなり集めている方だと思うので、公式サイトでアナウンスがあったCD5枚組+フォトブックのボックスセットは、果たして買うべきかどうかと正直かなり悩みました。

しかしDISC FIVEのレア音源集の魅力には抗えず、それ以上にフェリーさんの音楽を40年近く追ってきた身としては、これはコレクションとして買っておくべきアイテムなのだろうと思い直し、割と早い時期に予約注文した次第です。

Retrospective: Selected Recordings 1973-2023 [CD/Super Deluxe Boxset] – amazon
Retrospective: Selected Recordings 1973-2023 (Super Deluxe Boxset) [5CD+BOOK]- TOWER RECORDS

その後発売日(というか日本国内ショップの入荷日)が遅れたり、お届け予定日の数日前に受取先のコンビニがまさかの1週間臨時休業に入ってしまったり…と予期せぬ事態に見舞われたものの、紆余曲折を経て11月下旬には当方の手元に製品が届きました。

ボックスセットといっても先頃発売になった「マムーナ」のCD3枚組デラックス・エディションぐらいと思っていたのですが、ライナーノーツつきフォトブックが気合いの入った出来映えだったため、当方の想像以上に現物はサイズが大きかったし重かった。

豪華ブックレットには各曲ごとに演奏に参加したミュージシャンの名前が記載されているので、映画のサントラでもスタッフクレジットまでつぶさに目を通す自分としては、こういう細かな情報が実に有難い。

収録曲は全て書き起こしするのが面倒なので、画像をご覧下さい。

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この日が来るのを20年以上待っていました…。『ブレイド』『ブレイド2』のデラックス版サウンドトラックアルバムを遂に入手。

先頃Varese Sarabande CD Clubから『ブレイド』(98)と『ブレイド2』(02)のデラックス版(拡張版)スコアアルバム発売のアナウンスがあり、即予約注文しました。

以前『ブレイド』スコア盤のLPレコードが発売になったとき「違うよ…自分が欲しいのはマーク・アイシャムの劇伴を完全収録した拡張版スコアアルバムなんだよ…」と激しく落胆したものですが、この度遂に当方の切なる願いが聞き届けられたのでありました。

Blade (Original Motion Picture Score / Deluxe Edition) – amazon music
Blade (Original Motion Picture Score / Deluxe Edition) – TOWER RECORDS

Blade (Original Motion Picture Score) – amazon music

なぜ当方がこんなにも『ブレイド』の拡張版スコアアルバムの発売を望んでいたかというと、劇場公開当時リリースされたスコア盤は収録時間が30分程度しかなかったから。「いくら劇中で歌曲を流していたとはいえ、劇伴がたった30分ということはないでしょ…」と思いました。
つまりスコア盤にはアイシャムの劇伴をほんの一部しか収録していないのではないかと。この時期のVarese盤は収録時間が30分前後のものも多かったですし。

それでは今回のデラックス・エディションのスコア盤はどうなのかと申しますと、収録時間が72分近くありました。収録曲は46曲。通常版スコアアルバムの倍以上の収録時間と6倍近い収録曲数です。

ああ、買ってよかった…。

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『マトリックス』公開25周年仕様の拡張版スコアアルバムを購入したお話。

自分は2008年にVareseからリリースになった『マトリックス』(99)のデラックス版スコアアルバムを持っているので、また新しく買う必要もないんじゃないかな…と思ったものの、逡巡の末、結局25周年記念仕様のスコアアルバムも買ってしまいました。

The Matrix (Original Motion Picture Score / 25th Anniversary Expanded Edition) – amazon music
The Matrix (Original Motion Picture Score / 25th Anniversary Expanded Edition) – TOWER RECORDS

アルバムにはドン・デイヴィスの劇伴を全18曲収録。曲数は多いものの、収録時間は44分前後でした。ブックレットはスタッフクレジットとトラックリストだけで、デイヴィスによるセルフライナーノーツや識者による音楽解説もなし。

では一体どのあたりが25周年記念仕様なのかというと、

  1. Yuko Shimizu書き下ろしのオリジナルアートワーク
  2. 収録曲はドン・デイヴィス自身が選曲
  3. 1999年リリースの通常版スコアアルバムよりは収録時間が14分長い

…とまぁこんなところでしょうか。特別仕様の割には価格が安めだったのはそういうわけかと思いました。

Yuko Shimizu女史は浮世絵とアメコミ(グラフィック・ノベル)の折衷的な画風で知られるアーティストのようです。アートワークに力を入れている点と、44分という収録時間から考察すると、今回の『マトリックス』25周年記念盤はアナログレコードでの販売を前提として作られたものと思われます。ま、当方は置き場所と予算の都合上CDで買いましたが。

The Matrix 25th Anniversary Expanded Edition<限定盤: Analog LP> – TOWER RECORDS

せっかくなので『マトリックス』スコア盤リリースの変遷を振り返っていきたいと思います。

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