オリジナルのフランス映画『すべて彼女のために (Pour Elle)』(08)が上映時間96分なのに対して、リメイク版の『スリーデイズ』(10)は134分。
この時点で何だか嫌な予感はしたのですが、本編を観てみたら、やっぱりこれはオリジナル版の方がよく出来てるなー、という印象でした。
オリジナルのフランス映画『すべて彼女のために (Pour Elle)』(08)が上映時間96分なのに対して、リメイク版の『スリーデイズ』(10)は134分。
この時点で何だか嫌な予感はしたのですが、本編を観てみたら、やっぱりこれはオリジナル版の方がよく出来てるなー、という印象でした。
仕事が忙しかったり風邪引いたりしてすっかり忘れてましたが、ゴールデングローブ賞の授賞式は今月16日だった。
賞の部門はいろいろありますが、やっぱり仕事柄いちばん気になるのは作曲賞なわけで。
今年のノミネート作品は以下の通り。
・アレクサンドル・デプラ/『英国王のスピーチ』
・ダニー・エルフマン/『アリス・イン・ワンダーランド』
・A・R・ラフマーン/『127 HOURS』
・トレント・レズナー & アッティカス・ロス/『ソーシャル・ネットワーク』
・ハンス・ジマー/『インセプション』
アカデミー賞の作曲賞候補もほぼ同じ顔ぶれになるのかなー。
先週『ウルフマン』(10)を観てきました。
ベニチオ・デル・トロとエミリー・ブラントという僕のお気に入りの役者さんが
出てるので、彼らの演技は(個人的に)それなりに楽しめましたが、印象と
してはフツーの怪奇映画という感じでした。事件の真相も「あの人」が登場
した途端に何となく分かってしまいますし。
まぁ、製作中にゴタゴタがあった割にはソツのない仕上がりになっていた
ような気はしますが。
問題はそのゴタゴタだったりするんだなぁ。この前『タイタンの戦い』(10)で
作曲家交代劇があった事を書いたばかりですが、この映画でも交代劇が
起こってしまったのです。しかも、状況的にはこっちの方がもっとややこしい。
お待たせしました(別に待ってないか)。
今回は『ミルク』(08)のサウンドトラックについて。
このところガス・ヴァン・サントは既製曲のコンピレーションを中心とした
サントラを作っていたのですが、『ミルク』では久々にオリジナル・スコアが
つきまして、ダニー・エルフマンとタッグを組んでおりました。
1998年の『サイコ』以来の顔合わせだなぁ、と思ったのですが、あの映画の
音楽はバーナード・ハーマンの曲を完全カヴァーした構成だったので、
エルフマン書き下ろしのオリジナル曲となると、前年の『グッド・ウィル・ハン
ティング 旅立ち』(97)以来という事になるわけです。
今回の『ミルク』では、あのエルフマン独特のケレン味をぐっと抑えたシックな
装いのオーケストラ・サウンドを披露しています。
ハーヴィー・ミルクのパーソナリティをそのまま反映させたような、全体的に
優しげで控えめな感じと申しましょうか。切なくてやるせないけれど、どこか
希望を感じさせてくれるサウンドです。
特に23曲目から25曲目の展開は、映画本編を見た後に聴くとかなり泣けます。
実際、久々に聴いたら映画の終盤のシーンを思い出して目頭が熱くなりました。
あの名作『シザーハンズ』(90)のラストシーンのような、静かな感動を呼び
起こしてくれる名曲というか何というか。
やっぱりスラムドッグなんたらより、『ミルク』が作曲賞を獲るべきだった
ような気がします(今更ですが)。
アルバムにはエルフマンのスコア22曲に加えて、70年代当時のヒット曲が
6曲収録されています。聴き所はSylvesterの「You Make Me Feel (Mighty
Real)」でしょうか。このシルヴェスターという人、いわゆるドラァグ・パフォー
マーでして、ゲイのディスコシンガーだったんですな。で、ミルクの誕生
パーティーで実際にこの曲を歌った事もがあるのだそうです。
映画でもそのシーンがそっくりそのまま再現されていて、ケバケバしい
格好をした歌手がファルセット・ヴォイスでこの曲を熱唱しておりました。
シルヴェスター本人は1988年にAIDSで亡くなっているので、映画に
登場するのは彼に扮したそっくりさんなのですが。
差別や偏見と闘うマイノリティの人々の物語に、Sly & The Family Stoneの
「Everyday People」を持ってくるあたりも実にニクい選曲です。
ただ、スウィングル・シンガーズの「プレリュード第7番(バッハ)」をあの
シーンに持ってくるというのは、本気でやっているのか笑いをとるために
やっているのか、ちと判断しかねます。ガス・ヴァン・サントも屈折した
ユーモアセンスの持ち主だからなぁ。ま、このあたりは映画を観た人の
感性にお任せしますって事ですかね。
CDにはその他にもDavid Bowieの「Queen Bitch」やThe Hues Corporationの
「Rock the Boat」、The Sopwith Camelの「Hello, Hello」を収録。
ハズレなしのナイス選曲です。
それぞれのアーティストについてはCDのライナーノーツでざざーっと
紹介させて頂きましたので、ぜひぜひご覧頂ければと思います。
サウンドトラック盤はユニバーサルミュージックより今月15日発売。
慈愛に満ちたエルフマンの音楽をご堪能あれ。
『ミルク』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ダニー・エルフマン & Various Artists
品番:UCCL1140
定価:2,500円
先日、今年のアカデミー賞のノミネート作品が発表されました。
まぁ、ワタクシもこういう仕事をしている関係上、ノミネート作品や受賞結果は
いろいろ気になるわけでございまして、特に最優秀作曲賞に関しては毎年
「誰が受賞するのかなぁ」と自分なりに予想を立ててみたりしています。
今年の作曲賞ノミネートは下記の通り。
アレクサンドル・デプラ / 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
ジェームズ・ニュートン・ハワード / 『ディファイアンス』
ダニー・エルフマン / 『ミルク』
A.R. ラフマーン / 『スラムドッグ$ミリオネア』
トーマス・ニューマン / 『WALL・E / ウォーリー』
ううむ。これは予想が難しい。
デプラは『真珠の耳飾りの少女』(03)、『シリアナ』(05)のゴールデングローブ賞ノミネートを
経て『The Painted Veil』(06)で同賞受賞、『クィーン』(06)でアカデミー賞ノミネート、と最近
勢いづいているので、『ベンジャミン・バトン』で念願のオスカー初受賞という可能性も大。
ラフマーンは「『ムトゥ踊るマハラジャ』(95)の音楽の人」として有名ですが、最近は
クレイグ・アームストロングと共同で『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(07)の音楽を
担当していたりします。アカデミー賞は非西洋圏の音楽を高く評価する傾向があるので、
その線から受賞という流れになるかもしれません。もしくは作曲賞ではなく歌曲賞の方で
受賞する可能性もあり。
JNHとニューマンは共に「無冠の帝王」といった様相を呈しておりますが、二人とも才能の
ある作曲家である事に疑いの余地はありません。ただ、『ディファイアンス』は思ったより
賞レースで話題にならなかった事、『WALL・E』はアニメ作品である事が「ノミネートまでは
アリだけど受賞はねぇ…」と判断される要因になりそうな気もします。
『ミルク』は先日試写で観て参りましたが、素晴らしい映画でした。エルフマンの音楽も
すごく流麗なスコアで、終盤の音楽は切なくて泣けました。音楽のクオリティは申し分ありません。
ただ、『ミルク』は実在のゲイの活動家を描いた作品なので、保守派の評価がどうなるかが
運命の分かれ道といった感じです(音楽の評価にはそれほど影響ないかもしれませんが)。
個人的には『WALL・E』と『ミルク』のサントラ盤の仕事をしたので、どちらかの作品に
受賞して貰いたいのですが、私情を挟まずに受賞結果を予想するなら、
本命:アレクサンドル・デプラ
対抗:A.R. ラフマーン
大穴:ダニー・エルフマン
…ではないかな、と思います(ハズレたら恥ずかしいなぁ)。
去年の予想(『つぐない』(07)のダリオ・マリアネッリ)は当たったんだけど。
皆様の予想はいかがでしょうか?