渋さが増したピアース・ブロスナンにふさわしい音楽とは?→その答えは『スパイ・レジェンド』のサントラ盤にある…と思う。

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さて今回は『スパイ・レジェンド』(14)の音楽についてのお話です。
オリジナル・スコア作曲は『ワールド・ウォー Z』(13)のマルコ・ベルトラミ。

ここ数年のロジャー・ドナルドソン監督作品は、『世界最速のインディアン』(05)、『バンク・ジョブ』(08)、『ハングリー・ラビット』(11)など、ベテランのJ・ピーター・ロビンソンが音楽を担当していたので、今回もロビンソンになるんだろうなーと当初思っておりました。
ところが本作の製作総指揮を兼任するブロスナンの提案で、ベルトラミを起用することになったらしいです(この辺の事情は日本版サントラのライナーノーツに書かせて頂きました)。

まぁ恐らくロビンソンが音楽担当だったら、正直サントラ盤がリリースになったかどうかも怪しかったので、こうしてサントラがCDアルバムリリースになったのも、ベルトラミのネームバリューあってのものだったではないかと。

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【朗報】Rambling Recordsから傑作サントラ盤50タイトルがDSDリマスタリングで再発売!

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サントラ盤やオサレなコンピ盤、
国内外の個性派アーティストのアルバムを精力的にリリースしているランブリング・レコーズさんから、
サウンドトラック盤の新旧名作50タイトルがリイシューされることになりました。
しかも全作品DSDリマスタリング&低価格でのリリース。
さらに高音質96kHz/24bitハイレゾ配信も同時リリースしてしまうらしいです。

以下、ランブリングさんのサイトから、
今回のリイシューのコンセプト紹介文を抜粋。

「この音楽、どこかで聴いたことある…」
そうした音楽のフレーズは、映画のサウンドトラックの楽曲であることがしばしば。
映画音楽の「スコア」と言われる音楽の深さ、
そしてそのクオリティの高さを皆さんに体感して頂くべく、
全ての音源にDSDリマスタリングを施し、
往来よりも低価格で発売することになりました。
より良い音源に生まれ変わったサウンドトラック、
一挙50タイトルをお楽しみ下さい!

オリジナル・スコアの奥深さ、
そしてクオリティの高さをリスナーの方に体感してもらいたいから、
単に旧盤をそのまま安価でリリースするのではなく、
DSDリマスタリングによる質の高い音で再発売しましょう!という心意気。
サントラの仕事に携わる者としては、嬉しくて泣けてきますね。。
これはもう「歌の入ってないサントラ盤はつまらない」とか言ってられませんよ!
スコア盤の面白さが分かると、映画もより深く味わえるようになりますからねー。

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検証:『ウルヴァリン:SAMURAI』の音楽はなぜマルコ・ベルトラミでなければならなかったのか

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先頃映画館に観に行った『ウルヴァリン:SAMURAI』(13)。
今の時期に映画本編のレビューを書いても、
何だかタイミング的にビミョーな気がするので、
テーマを音楽に絞って何か書いてみようかなと思います。

『ウルヴァリン:SAMURAI』の監督ジェームズ・マンゴールドは、
作品ごとに毎回異なる作曲家と組んできた人。
(それが意図的なのか単にご贔屓の作曲家がいないのかは不明)
ところが今回、過去に起用した作曲家と初めて再び組む事になりました。
その作曲家はマルコ・ベルトラミ。
傑作西部劇『3時10分、決断のとき』(07)以来、実に6年ぶりのタッグです。

『X-MEN』シリーズなら『ナイト&デイ』(10)で組んだジョン・パウエルでもいいだろうし、
(パウエルは『X-MEN:ファイナル・ディシジョン』(06)の音楽もやってるので)
『アベンジャーズ』(12)や『キャプテン・アメリカ』(11)、『G.I.ジョー』(09)など、
近年アメコミ映画づいている『”アイデンティティー”』(03)のアラン・シルヴェストリという選択肢もあったのに、
なぜベルトラミに白羽の矢が立ったのか。

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ディザスター、サバイバル、ロードムービー、そして頭文字Zのアイツ―― 『ワールド・ウォー Z』はミクスチャー・アクションホラー映画だった。

いくらお盆休み中でブラピの主演作とはいえ、真っ昼間からゾンビ映画を観に行く人はそれほどいないだろう…と思って『ワールド・ウォーZ』(13)予想以上にお客さんが入っていてビックリ。「ゾンビ映画であること」を徹底して隠した宣伝戦略が功を奏したという事でしょうか(観終わった後で何と言われるかは分かりませんが…)。

そんなわけでこの『ワールド・ウォーZ』はゾンビ映画ではあるものの、かなりいろんな要素が入っているように思います。
感染者が襲いかかってきて街中大パニックになるのはディザスター映画風。
主人公パーティーが手持ちの装備だけで何とか生き延びようとする展開はサバイバル映画風。
治療法を求めて世界中を飛び回り、道中で様々な人々と一度限りの出会いと別れを経験するのはロードムービー風といった感じ。
カメラが近すぎ&揺らしすぎで見づらいシーンがいくつかあるのが難点ですが、残虐描写は(これでも)控えめなので「走るゾンビ映画入門編」としてはよく出来た作品ではないでしょうか。

ブラッド・ピットが全編出ずっぱりの映画なので、共演のキャストは「地味だけどよく見かける顔の演技派俳優」で揃えてます。
一番メジャーなのは歯無しの元CIAエージェント役デヴィッド・モースでしょうか。『ザ・ロック』(96)『グリーンマイル』(99)のあの人。
名も無き空挺部隊員役で顔を出すのは『LOST』のジャック・シェパードことマシュー・フォックス。本当は続編を見越した重要な役だったのに、続編企画が棚上げになって出番が減ったらしい。
在韓米軍奇襲隊司令官役は近頃売れっ子になってきたジェームズ・バッジ・デール。『ローン・レンジャー』(13)でアーミー・ハマーの兄役を演じていた人。
WHO職員役でes[エス](02)のモーリッツ・ブライブトロイも出てました。
儲け役はイスラエル軍のセガン中尉を演じたダニエラ・ケルテスかな。「イスラエルのクリステン・スチュワート」みたいな感じで印象に残ります。

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マルコさんの音楽は頑張っていたと思う『ダイ・ハード/ラスト・デイ』

a good day to die hard

先月末、巷であまり評判のよろしくない『ダイ・ハード/ラスト・デイ』(13)を観て参りました。

自分は『ダイ・ハード4.0』(07)のサントラ盤のライナーノーツを書かせて頂いた身ですし、その時に作曲家のマルコ・ベルトラミ(以下マルコさん)ともやり取りした思い出もありますので、せっかくマルコさんが前作に続いて音楽を手掛けたのに、ムゲにスルーのもいかがなものかと思い、わざわざ映画館まで観に行った次第です。

さてその映画の感想はと申しますと、
ひとことで言えば「雑」な映画だったかな、と…。

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