『嵐が丘』(1992年)のリマスター完全盤サントラを買ったので雑感(と旧盤の思い出話)

La-La Land Recordsから坂本龍一(以下”教授”と表記)の追悼盤として1,000枚限定でリリースになった『嵐が丘』(92)のリマスター完全盤サントラを買いました。
ちなみにランブリング・レコーズさんが国内流通を担当されたものは帯付きでした。

初収録になる音源を5曲収録&音源のリマスタリングがセールスポイントのアルバムですが、旧盤も収録時間が69分近くあったので、収録時間は7分ほど増えた程度。1992年リリースとはいえ旧盤も極端に音が悪いという感じではありませんでした。
個人的にはブックレットの読み物(ライナーノーツ)が充実していた点が最も満足度が高かったです。旧盤のブックレットはプレス資料のプロダクション・ノート部分を転載しただけのもので、教授のサントラ盤なのに音楽について一切触れられていなかったため、詳細な音楽解説が読めるのは有難かった。

そこで今回の詳細なブックレットを読んで分かったことなのですが、この映画は英国での興行成績が芳しくなく、当時アメリカでの劇場公開が見送られたらしい。したがって海外ではサントラ盤もリリースされなかった

確かにUSやUKのamazonなどを覗いてみると、『嵐が丘』のサントラは日本盤が出品されていて、いわゆるUS盤やUK盤は全く見当たりませんでした。

だから日本のリスナーにとっては「31年ぶりのリマスター音源による再版サントラ」なのですが、欧米のリスナーにとっては「待望の世界リリース」的なアルバムという位置づけなのかもしれません。

嵐が丘 サウンドトラックリマスター完全盤/【輸入盤国内仕様】 – amazon
坂本龍一 オリジナル・サウンドトラック 嵐が丘<限定盤> – TOWER RECORDS
坂本龍一 Wuthering Heights<限定盤> – TOWER RECORDS (輸入盤)

続きを読む

『レヴェナント 蘇えりし者』の音楽は、サントラの枠を超えた実験音楽・アンビエント・エレクトロニカの野心作かもしれない。

the revenant

先日やっと『レヴェナント 蘇えりし者』(15)を観てきたのですが、
見応えのある映画でございました。

もはや説明不要のエマニュエル・ルベツキによる圧倒的な映像&カメラワーク、
「目的を果たすまで俺は絶対死なない」という強固な意志に貫かれたグラスの人物像、
「俺は絶対オスカーを獲る」というレオ様の気迫の成せる業かもしれませんが)
「利己的で他人を理解する気が全くない男」を演じたトム・ハーディの存在感、
そして”教授”坂本龍一の音楽。
どれも素晴らしいではありませんか。

『レヴェナント』の音楽はメロディー的な盛り上がりを極力抑えたサウンドで、
ミニマルとかアンビエント、あるいはサウンドスケープとか、
そういった感じの音楽。
サントラ盤は全23曲(輸入盤)で収録時間70分少々。
最初から最後まで全編張り詰めるような緊張感が漂ってます。
再生YMOのアルバム「テクノドン」に教授のNostalgiaという曲がありましたが、
重厚なストリングスの和音が繰り返される構成は、
あの曲の雰囲気に近い印象を受けました(あくまで個人的見解)。

 

続きを読む

Out of Noise

教授の新作『Out of Noise』を購入しました。

今回は「フルアートワーク盤」、「パッケージレス盤」、「アナログ盤」、「配信盤」の
4つのリリース形態だったわけですが、ワタクシは無難に「パッケージレス盤」を
チョイスしました。

学生の頃だったら迷うことなく「フルアートワーク盤」を選んだと思うのですが、
以前『Sweet Revenge』と『Smoochy』を初回限定盤で買ったら置き場所に困った、
という思い出があるので、今回はパッケージレス盤にしました。

それに、今月は幸宏さんの新譜『Page by Page』と再発盤でお金を使いそうだったので・・・。

さて本題の『Out of Noise』なんですが、うーん・・・ワタクシにはかなり難解かつ高尚な
感じでした。

commonsのメールマガジンや雑誌の記事などを読んで、大体こういう音楽になるだろう
とは思っていたのですが、想像以上に「ピアノ曲」(『BTTB』とか『トニー滝谷』みたいな
感じ)が少ないなぁ、と。その辺がちょっと意外な気もしました。

commonsmartのサイト内に教授本人の楽曲解説があるので、詳しくはそちらを
見て頂くとして、まぁ今回のアルバムは教授の音楽のコアなファン向きというか、
「家具の音楽(サティ)」、「ミュージック・コンクレート」、「アンビエント」、「ブライアン・イーノ」
というようなキーワードにピンと来た方向けの作品と言えるでしょう。

ワタクシは『音楽図鑑』を教授作品のベストに挙げている人間なので、あのような音楽は
もうやってくれないのかな、と思うと少々寂しくなったりします。

でもHASYMOのライヴで「Tibetan Dance」とか演ってるから、本人もああいうノリは今でも
嫌いじゃないとは思うんだよなぁ。あるいは今の教授の音楽嗜好でああいうサウンドを
やろうとすると、前回の『Chasm』みたいになるのでしょうか。

今回の『Out of Noise』、ワタクシは仕事中のBGMや就寝前のBGMとして楽しんでます。
このアルバムは論理的に「理解」して聴こうとすると(精神的に)相当疲れますが、肩肘
張らずにリラックスして聴くとあら不思議、ピアノ、弦、環境音といった音の層が心地よく
耳に入ってくるではありませんか。

そんなわけで、第一印象の難解さから解放されたワタクシは、現在このアルバムを
仕事場でリピートして聴いている毎日です。