パブリック・エネミーズ

public enemies_01

公開まで1ヶ月を切ったし、
そろそろ宣伝も兼ねてこの映画についてあれこれ書いた方がよさそうな気がするので、
本日は『パブリック・エネミーズ』(09)のお話。

この映画、東宝東和さんの試写で見せてもらったのが8月中旬でした。
ちょうど前日に『ワイルド・スピードMAX』(09)の試写で東京に来ていたので、
せっかくだからもう一本観て帰ろう!と思い立ち、
試写日程の連絡をくれたユニバーサルミュージックのMさんに
「ぜひ行かせて頂きます!」と電話で即答したのでありました。
夕方は小学校時代の友達ともミニ同窓会で盛り上がったし、
この週は充実した東京出張でございました。

閑話休題。

監督がマイケル・マンで、ジョニー・デップがジョン・デリンジャーを、
クリスチャン・ベールがFBIのメルヴィン・パーヴィスを演じると聞いて、
当初は「1930年代を舞台にして『ヒート』(95)的な事をまたやりたいんだな」と思ったのですが、
いざ本編を見てみるとそうでもない事が判明。
物語の中心になっているのはデリンジャーとビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)の破滅的な愛の逃亡劇で、
デリンジャー=デップが主役の映画でした。

まぁ、『ヒート』もデ・ニーロとエイミー・ブレネマンが終盤に逃避行を試みていましたけど・・・。

そんなわけで、パチーノとデ・ニーロの”2大競演”がウリの『ヒート』と違って、
今回のベールは脇役扱い。
とはいえ、ベールは主役を食わない程度に存在感を発揮(←ここがベールの巧いところ)して、
『アメリカン・サイコ』(00)の時のようなニヒルな佇まいを見せてくれています。
ベールの出演シーンもちゃんと観てあげて下さいね。

そして肝心のジョニー・デップなのですが、
クラシックなギャングスター姿もイケてます。
ジャック・スパロウのようなキャッチーな要素は一切ナシ。
でも銀行強盗時のクールな振る舞いなどは、『ヒート』のデ・ニーロに勝るとも劣らないカッコよさ。
劇中、結構クサい演出もあったりするのですが、
まぁデップなら絵になるので許すという感じ。
マイケル・マンは一見硬派そうですが、
実はかなりのロマンティストではないかと自分は見ております。
まぁ自分はそういう部分も含めてマン作品が好きなので、
随所で「マイケル・マン節」が炸裂する本作を楽しんで拝見させて頂きました。

この映画、公開前から「1930年代のドラマをHDカメラで撮るのはいかがなものか?」という事が話題になってました。
レトロな時代の映画なら、フィルムで撮影してセピアがかった映像にすれば味が出るのに…という事なのだと思いますが、
マンは近作でHDカメラを使いまくっているし、
「わざとらしく古臭さを強調する要素は一切排除したかった」と言っているので、
そういう画作りには全然興味がなかったみたいです。

多分、「もし1930年代のあの場にいたらどう見えるか?」・・・という映像を作りたかったのでしょう。
ドキュメンタリー・タッチの映像というヤツでしょうか。
こういう試みはあまりなかったので、なかなか新鮮です(好みは分かれるでしょうけれども)。
ちなみに撮影監督は『インサイダー』(99)以来久々のタッグになる名手ダンテ・スピノッティ。

で、マイケル・マンの映画と言えばリアルな銃撃戦とこだわり抜いた音響効果も要チェックなわけで、
今回もマシンガンを撃ちまくる銃撃戦が用意されております。
マニアな方には、リトルボヘミア・ロッジ銃撃戦の音響効果とか、
フォードのV8フラット・ヘッド・エンジンの音なども楽しんで頂けるのではないかと。

マン監督のもうひとつのこだわり、サウンドトラック(劇中音楽)についてはまた後ほど。

  

Charlie Dechant Buddy Helm Flute Djembe july 22 part 1

先週から今週にかけて、公私共に何だかとっても忙しい状態が続いているので、
本日のブログはお休みです。

その代わりと言っては何ですが、チャーリー・デシャントとバディ・ヘルム(Bethlehem
Asylum)の味のあるセッション映像でお楽しみ下さい。

ちなみにバディ・ヘルムが叩いているのは、映画『扉をたたく人』(07)で話題になった
打楽器「ジャンベ」でございます。2人とも渋いなぁ。

   

ピエール・バルー&マイア・バルーのミニコンサート

7日は夜8時から米ヶ袋の「カフェモーツァルト・アトリエ」で、ピエール・バルー氏と愛娘のマイアさんのミニコンサートがあったので、見に行って参りました。

バルー氏、格好良かったなぁ。

映画『男と女』(66)の公開から40年近く経っているわけですが、雰囲気はあの頃のままでした。ステージで歌うバルー氏をずーっと見ていると、映画の名シーンが自動的に脳内上映され、非常に感慨深いものがありました。

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A La Vie Prochaine

a la vie prochaine(DVD)

先頃の『Page By Page』リリース時に、「高橋幸宏FAIR 2009 DVD全員プレセントキャンペーン」
という企画をやっていたのですが、その時にEMIミュージック・ジャパンから送ってもらった幸宏さんの
PV集『A La Vie Prochaine』を今頃になってようやく鑑賞。

このDVDは1990年にレーザーディスクとVHSでリリースされたPV集のDVD化作品で、自分も当時
VHS版を買ったクチです。もっとも、当時はあまりこのビデオを見た記憶がないのですが、多分90年
当時はこの作品集の良さを理解するには幼すぎたのでしょう。何たって中学生でしたから。

a la vie prochaine(VHS)

・・・というわけで、改めて本編を見てみると、お洒落でいい作品だなーと今更のように思ってしまうの
でした。特に”X’ MAS DAY IN THE NEXT LIFE”のPVはモノクロの色味や構成がクロード・ルルー
シュの映画っぽくてグッと来ますな。実際、”FOREVER BURSTING INTO FLAME”のPVはドー
ヴィル海岸で撮ってますし。

幸宏さんのエッセイ集「ヒトデの休日」によると、”X’ MAS DAY…”のPVはサン・ラザール駅でゲリラ
撮影を敢行したとの事。ちなみにフランスでのPV撮影は、現地の日本人コーディネーターの仕切りが
悪くていろいろ大変だったそうで、同エッセイ集にもあれやこれやと舞台裏の事が書いてありました。

ま、この時期の幸宏さんのエッセイは文体が椎名誠調で、書いてある事も脚色している可能性が
あるので、真偽の程は定かではありませんが。

今夜のBGMは『BROADCAST FROM HEAVEN』で決まり・・・かな。

  

The Time Traveler’s Wife

the time traveler's wife

昨日は映画館に行ったら、映画の日でも何でもないのにチケット売り場に行列が。何でかなー
と思ったら、『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』の公開初日だったんですね。

自分が観に行ったのは『THIS IS IT』ではなく『きみがぼくを見つけた日』(09)だったので、
本日はそのお話をダラダラと。

この映画、原題は『The Time Traveler’s Wife』なんですが、何だかずいぶん特徴のない邦題に
なってしまいました。ま、既に原作小説がある作品ですし、過去に『タイムトラベラー きのうから
来た恋人』(99)という映画もあったので、今回「タイムトラベラー」という言葉が使えなかったのかも
しれません。時空旅行がキーの話だけに、ちょっと第一印象で損をしているような気がします。

本作は「自分の意思とは関係なく、日常生活中に突然、不特定の場所・時間に時空旅行して
しまう」という特異体質を持った男ヘンリー(エリック・バナ)と、幼い頃に彼と運命的な出会いを
果たした良家のお嬢様クレア(レイチェル・マクアダムス)の悲恋ドラマ。「自分の意思とは関係
なく云々」というのは、『LOST』第4シーズンのデズモンドのような感じですかね。

ひと昔前までは、こういうタイムトラベル作品(例えば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ)は
「過去を変えたら現在や未来はどうなる?」というタイムパラドックス的な要素が物語の重要な
ポイントになったわけですが、『LOST』といい本作といい、どうも最近は「起きてしまった過去の
出来事は変えられない」という考え方が浸透しつつあるようです。

本作の脚本(=脚色)を手がけたのが『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)、『ジェイコブス・ラダー』
(90)などのブルース・ジョエル・ルービンという事で、映画の後半から独自の死生観に基づいた
運命論的な話になります。「この世での死が全ての終わりではない」というような展開は、過去の
作品のテーマと共通するものがあるような気がしました。

・・・と、まぁ異色の恋愛ドラマが展開する本作ですが、物語の世界を異色たらしめているのは
マイケル・ダナの音楽によるところも大きいのではないかな、と自分は思います。ピアノや弦、
木管で奏でられるミニマリスティックなメロディーは甘すぎず冷たすぎず、劇伴として実にいい
感じのバランス。登場人物の心理状態を観客に想像させる余地を残しているので、感動を強要
するような押しつけがましさがない。言わば和食のような慎ましい味わいの音楽。『17歳のカル
テ』(99)とか『偶然の恋人』(00)の音楽も抑えた感じで良かったもんなぁ。

サントラ盤には、ヘンリーとクレアの結婚式のダンス・パーティーの場面で流れる”Love Will
Tear Us Apart”(Joy Divisionのカヴァー)も収録。この曲がこういう風に化けるとは思わな
かった。ムード歌謡風というのでしょうか。ちょっと衝撃。

CDの最後にLifehouseの”Broken”が収録されていたので、てっきりエンドクレジットで使われる
のかと思いましたが、エンドクレジットはスコアのメドレーでした。この曲はイメージソングという
扱いなんでしょうか。もっとも、今回はダナのスコアで〆て正解だったと思いましたが。