やっぱりBLURが好き

今日は午後に便利屋さんに来てもらって、ユニットバスのクリーニングをお願いしました。
作業中は仕事場を留守にできないので、午後は部屋でせっせとデスクワーク。

本日のお仕事中のBGMは、先日Blur Storeで購入したBLURのライブ・アルバム「All The
People / BLUR Live at Hyde Park」の7月3日公演盤。これが最高にイカス。

2003年のアルバム「Think Tank」リリース前に脱退したグレアム・コクソン(g.)が電撃復帰
して、オリジナル・メンバー4人が久々に一堂に会したライブという事で、メンバーも観客も
テンションが高い高い。グレアムのサイケなギターが炸裂!アレックスのベースがうねる!
デイヴのドラムが唸りを上げる!デーモンさん大熱唱!観客も大合唱!ってな感じで、会場
大盛り上がり。「観客が大合唱するライブ」といえばオアシスが有名なわけですが、いやいや
ブラーも負けちゃいませんって。

ワタクシが初めて聴いたブラのアルバムは「パーク・ライフ」だったので、初ブラー体験は
高校生の頃になります。今や語り草となっている「オアシスvsブラー抗争」をリアルタイムで
体験した世代なわけですが、自分はずーっとブラー派でした。

ワタクシが当時オアシスではなくブラーを選んだ理由はというと、ギャラガー兄弟のガラの
悪い言動が、中学時代の大っ嫌いだったイジメっ子を連想させたから・・・という音楽性とは
全然関係ないものでした。何事も第一印象が肝心って事ですかね(ちょっと意味が違うか)。

とはいえ、今日に至るまでブラーの音楽とお付き合いしてきて、ブリット・ポップ、ローファイな
オルタナ系サウンド、ワールドミュージック、ヒップホップ(Gorillaz)、映画音楽(デーモンさんは
『ラビナス』(99)、『私が愛したギャングスター』(00)、『101 Reykjavik』(01)のオリジナル・スコア
作曲を担当)・・・と、いろいろな音楽体験をさせてもらったので、今更のようにあの時ブラーを
選んでよかったなぁ、としみじみ思うのでした。

あ、そういえばブリちゃんが先日の「仙台コレクション」に急遽出演したそうなのですが、
自分は仕事が入っていて見に行けなかったので、詳しくは本人のブログをご覧下さい。
舞台裏の写真とかもいくつかUPしている模様です(Artist Linkから行けますので是非)。

ちなみにユニットバスは見違えるほどキレイになりました。便利屋さんどうもありがとう。
そしてお疲れ様でした。

  

ハートブルー(パトリック・スウェイジに捧ぐ)

2009年9月14日、俳優のパトリック・スウェイジが亡くなりました。享年57歳。死因は
すい臓ガンとの事でした。病気とは無縁そうなマッチョな風体のお方(バレエ・ダンサー
出身)だっただけに、その早すぎる死が本当に惜しまれます。

一般的には『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)や『ダーティ・ダンシング』(87)で広く
知られているスウェイジでありますが、『3人のエンジェル』(95)のドラァグ・クイーン役や
『ドニー・ダーコ』(01)の胡散臭い自己啓発セミナーの教祖役、B級アクション『ブラック・
ドッグ』(98)のトラック野郎役など、型にはまらない個性的なキャラを約30年に渡って演じ
続けてきた個性派アクターでした。

その中で彼の代表作を一つ挙げるとするならば、筆者の場合は断然キャサリン・ビグロー
監督作『ハートブルー』(91)をチョイスしたいと思います。

初めてこの映画を観たのは高校生の頃で、確かTVの深夜枠で放送していた時だったと思うの
ですが、スウェイジ扮するサーファーのボディ(注:役名です)が実にカッコよかった。
ボディは東洋思想に通じる独自の人生観のような物を持っていて、サーファー仲間だけでなく、
彼らを追うFBI捜査官のジョニー・ユタ(キアヌ・リーヴス)すらも魅了してしまうカリスマ的な男
という設定でした。これがスウェイジの持つワイルドな雰囲気と絶妙にマッチしていたのです。

もちろん、ユタとボディはFBIと銀行強盗という立場なので、いずれは敵対する関係になるわけ
ですが、それでも心の中では互いをリスペクトしているのではないか、と思わせる「男の友情」
の描写が実に熱い。ラストの締め方もお互いの敬意というか友情が垣間見えて、不覚にも当時
ジーンと来てしまいました。

この作品を未見の方は、今からでも是非ご覧下さい。映画を見終わった頃には、『ゴースト』
ではなく、あえてこの作品をスウェイジの代表作にチョイスした筆者の気持ちもきっと理解して
頂ける・・・ハズ。

余談ですが、ユタと相棒のベテラン捜査官パパス(ゲイリー・ビジー)との親子のような関係も
グッド。特にパパスが張り込み中に新聞のマンガ欄を読んでだらしなくバカ笑いするシーンが
最高。ビグロー監督はこういう男同士の何気ないやり取りの描写がうまいんですよねー。新作
『The Hurt Locker』(09)も楽しみです。

オリジナル・スコアの作曲を手掛けたのは、先日『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』(08)で
ご紹介したマーク・アイシャム。映画公開当時リリースになったサントラ盤にはスコアが
1曲も収録されなかったのですが、2008年にLa-La Landから2000枚限定でスコア盤が
リリースになりました。実に17年越しのリリース。映画の根強い人気が分かるというものです。

改めて聴いてみて思うのですが、やっぱ名曲だわコレ。映画の公開から18年経っているのに
まったく色褪せていません。確かにシンセの音は「80-90年代前半の音」というチープな感じは
否めないのですが、楽曲全体のクオリティは今でも十分通用する完成度。
特にアイシャムさん自身が「今でも自分のデモ・リールに入れている」というスカイダイビングの
シーンの曲”Skydive”が出色。空を舞う清々しさと浮遊感が巧みに表現された名曲です。

あとは『ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン!』(07)でもネタにされていた「ユタがボディを
撃てず、空に向かって銃を乱射」するチェイス・シーンの曲”Car / Foot Chase”も有名ですね。

・・・というわけで、”Skydive”と”Night Surfing”、そして映画のラストを締めくくる”Freedom”を
スウェイジ氏への追悼歌とさせて頂きたいと思います。

レスト・イン・ピース。

  

改造車!パンクス!UKロック!『ドゥームズデイ』には男のロマンが詰まってる!の巻

『ディセント』(05)のニール・マーシャル監督待望の新作、遂に日本公開!・・・って事で、
『ドゥームズデイ』(08)を観てきました。

シルバーウィーク期間中はチケットを買う際に、
窓口で「世界の終わり」と言うと1,000円で観られる「お得すぎてすいま千円キャンペーン」を実施中との事で、
ちゃっかり利用させて頂きました。
まー別に窓口で「すいま千円」とダジャレを言うわけではなかったので別にいいかと。

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正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官(音楽について)

前回のブログで映画本編については大体ご紹介してしまったのですが、補足・・・というか小ネタを一点だけ。実はこの映画、ショーン・ペンが小さな役で出演していたのですが、諸般の事情で出演シーンがまるまるカットされてしまったそうです。はてさて、一体どんなキャラクターを演じたのでしょうかねぇ。ちょっと気になります。

ま、それはさておき、本日は『正義のゆくえ』の物語を彩る音楽について。

本作のオリジナル・スコアはマーク・アイシャムが担当しています。『クラッシュ』(04)、『告発のとき』(07)、『帰らない日々』(07)など、このところ社会派ドラマの仕事が続いておりますが、映画のジャンルはもちろん、音楽的にもクラシック、ジャズ、ロック、アンビエントなどあらゆる様式に柔軟に対応出来る多才な人です。

個人的に、学生時代に聴いた『ハートブルー』(91)のシンセ・スコアや『蜘蛛女』(94)のエレクトリック・ジャズの音楽に感銘を受けて以来アイシャムさんのファンだったので、今回のライナーノーツは楽しんでお仕事させて頂きました。念願叶って、アイシャムさんにインタビューまで出来ましたし。

実は以前『告発のとき』のライナーノーツを担当する事になった時にも、アイシャムさんにはインタビューを試みたのですが、その時は先方のスケジュールの都合でうまくいきませんでした。しかし誠意ある交渉(単にしつこかっただけかもしれない)の結果、今回は二つ返事でOK。いろいろ話を聞かせてもらいました。いやー、いい人でよかった。大御所なのに全然気取ったところがないのです。

輸入盤ではなく、あえて国内盤を買って下さる映画/サントラ・ファンのために、ブックレット用インタビューでは「群像劇の曲作りの面白さ」、「『正義のゆくえ』の作曲コンセプト」、「映画の中で特に印象に残った場面」などについてアイシャムさんに熱く語ってもらいました。

詳しくはランブリング・レコーズさんから9/2にリリースになったサントラ盤をお買い求め頂いて、拙稿に目を通して頂ければと思います。

オリジナル・スコアもかなりクオリティ高いです。『クラッシュ』のようなアンビエント・ミュージック的な味わいを持たせつつ、生ギターやピアノ(アイシャムさんが弾いてます)でじっくり哀愁の調べを聴かせるタイプの音楽、と申しましょうか。電子音と生楽器のバランスが絶妙です。

決して主張の強いサウンドではないのですが、CDを聴いているうちに、物悲しいメロディーがリスナーの心にじわーっと浸透していくような、そういう音楽です。CD2曲目の”Drive to Mexico”とか、6曲目の”ICE Raid”あたりは切なくて泣けますよ。

ドラマに必要とされている感情の揺れ動きを的確に描き出し、だからといって過剰におセンチな雰囲気にはしない絶妙なバランス感覚の音楽。社会派群像ドラマの音楽はかくあるべし、という感じのサウンドトラックです。オススメ。

そういえば、アイシャムさんは12日にLAのThe Baked Potatoというライブハウス(?)でライブを演ったそうです。この方は腕利きのジャズ・トランペット奏者ですからねー。いつかこの目でナマ演奏を見て(聴いて)みたいもんです。

アイシャムさんのトランペットの腕前については、そのうち書かせて頂きます。

『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マーク・アイシャム
品番:GNCE7056
定価:2,625円

  

正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官

マスコミ試写の時に貰ったプレス資料に書いてあったのですが、ハリソン・フォードはこの映画で初めてメジャー・スタジオ以外の作品に出演したとか。そうか、興行的にパッとしなかった映画とか、見た目お金がかかってなさそうな映画でも、あれは一応メジャースタジオ製の映画だったんだなー、と今更のように思ってしまいました。

そういえばあまりこの人が「新進気鋭の若手監督と組んだ」とか「脚本に惚れ込んで、格安のギャラでインディー映画に出演」というような話は聞かなかったような気もします。

で、今回の『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』(08)がまさにそういう作品であったというわけです。

ハリソン・フォードは作品によって演技を変えてくるタイプというより、本人の持つオーラ/スター・パワーのようなもので魅せる(いい意味で)古風なタイプの役者なので、こういう低予算映画の、しかも群像劇で個性を発揮出来るのだろうかと思ったのですが、いざ本編を見てみたら、なかなかいい感じではありませんか。シャイア・ラブーフにオイシイところをほとんど持って行かれてしまっていた『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08)なんかより、遙かにいい演技をしていると思うんだけどなぁ。

彼が演じるのはICE(Immigration and Customs Enforcement=移民・税関捜査局)のベテラン捜査官マックス。正義漢だが、つい取り締まるべき不法滞在者の事情を気遣ってしまう人情家というキャラクターで、僕の大好きな『刑事ジョン・ブック/目撃者』(85)を彷彿とさせるものがあります。『ファイヤーウォール』(06)の闘うオトーサンもよかったですが、この映画の「ホトケのマックス捜査官」もいい味出してます。

一方、マックスと対極をなす屈折した移民判定官が登場するのですが、そのキャラを演じているのがレイ・リオッタ。どう見ても悪徳役人でしょ、これは。案の定、グリーンカードが欲しくて欲しくて仕方がないオーストラリア人の若手女優に向かって「永住権を何とかしてやるから、2ヶ月間オレの女になれ」などとのたまってくれます。さすがレイ・リオッタ。この人はこういうヤバい役をやらせると抜群に巧いなー。必見。

ちなみにコールの妻は人権派の弁護士なんですが(演:アシュレイ・ジャッド)、ま、多分若い頃はコールも理想に燃える真っ当な移民判定官だったのでしょう。それが歳を取って倦怠期を迎えたら、人生も仕事も斜に構えて見るようになってしまったと。恐らくそういう背景があるのではないかな、と思ったり。何となくリオッタの演技がそういう風に見えるんですよ。

この映画が扱っているのは「アメリカの不法滞在者問題」なので、同じ社会派の群像劇でも人種間のぶつかり合いを描いた『クラッシュ』(04)とはちょっと違うかな、と思います。だからこの映画では不法滞在者同士はあまり絡まず、「不法滞在者」と「彼らと何らかの形で関わる事になるアメリカ人(特に上記の3人)」のドラマを中心に物語が展開していきます。

ひとくちに「不法滞在者」と言うけれど、彼らがいなければアメリカの産業(経済)が成り立たないのもまた事実なわけで(いわゆる「3K」的な仕事を国内で一手に引き受けているのは彼らですから)、これは非常にデリケートかつ難しい問題のようです。

捜査官にも人情がある。
「彼ら」にも事情がある。

・・・というフレーズが、本作の全てを言い表していると言えるでしょう。映画のラストも決して後味のいいものではありませんが、社会派ドラマ的なメッセージ性と、サスペンス・スリラーとしての娯楽性のバランスがいい感じで、最後までダレずに観られます。

監督・脚本は『ワイルド・バレット』(06)のウェイン・クラマー。実はこの『正義のゆくえ』はクラマーが1996年に監督した短編映画『Crossing Over』のセルフ・リメイクです。オリジナルでミレヤ・サンチェスを演じていたジャクリーン・オブラドゥースが、今回はFBI捜査官を演じてます。オブラドゥースとハリソンは『6デイズ/7ナイツ』(98)で共演してますが、今回は2人が顔を合わせるシーンはナシ。

俳優の演技でじっくり見せるタイプの映画ですので、アクション大作に食傷気味の方は是非ご覧になってみて下さい。

詳しい内容はオフィシャルサイト(http://seiginoyukue.jp/)で。

音楽についてはまた後ほど。