Page by Page

世間はポカポカ陽気で、いよいよ春本番だなーという時期になって参りましたが、
いよいよ花粉症がヒドくなってきたワタクシは毎日ユーウツで仕方がありません。
だいたい外に2時間くらいいると症状が悪化して、具合が悪くなってくるんですな。

正直「もうやってらんねー」ってな感じなのですが、幸宏さんのニューアルバム
『Page by Page』を聴いている間は、嫌な事を全部忘れてシアワセな気分に
浸れるのです。

『Blue Moon Blue』、『Floating PUPA』に続く「高橋幸宏・エレクトロニカ三部作」の
第3弾という事で、「amiina、Lali Puna、ATOM、Steve Jansen、Corneliusら世界
各国のアーティストが参加を快諾!」と聞いた時は、期待が高まる一方で少々
不安でもありました。ゲストが大挙参加する事で、幸宏さん「らしさ」が薄まって
しまわないかな・・・と思ったんですね。

しかしそれは杞憂に終わりました。実際にCDを聴いてみると、そこにはいつもの
幸宏さんの世界観が広がっていたんですな、これが。

全体的な印象としては、『Blue Moon Blue』よりもグリッチ・ノイズが控えめで
音がマイルドな感じでしょうか。それが物足りないという方もいらっしゃるかも
しれませんが、ワタクシはこれぐらいの方が心地よいです。

詞の世界も(いつもの)私小説的な感じのものもあり、「ここではないどこか」を
歌った幻想的なものもあり、歌っている事は割と抽象的なんですが、心に
じわーっと来るものがあります。

何か、今回のアルバムから伝わってくる優しさとか切なさは、コンシピオ時代の
アルバム(『A Sigh of Ghost』とか『A Ray of Hope』)に通じるものがあるかなぁ、
とも思ったり。

幸宏さんのドラムと小山田圭吾のソリッドなギターが冴え渡る「Emerger」、
幸宏さんご本人が「Something New」(『Blue Moon Blue』収録曲)の続編と
語る切ないラヴソング「The Words」、Nine HorsesやJBKを連想させる
「Perfect Wound」、「Indefinable Point」など、音のヴァリエーションも結構
幅広いです。

でも、楽曲の根底にあるのは「いつもの幸宏さんのサウンド」というのが素晴らしい。
この「変わらないポップス観」がいいんだよなぁ、と、教授の『Out of Noise』を
聴いた後は余計にそう思いました(笑)。

ちなみに『ニウロマンティック』、『薔薇色の明日』を幸宏さんのベストに挙げる
ワタクシの母は、以前仙台メディアテークで行われた『Something Blue, Extra』の
ライブを観に行った際、そのあまりにも前衛的な音楽を目の当たりにして

「幸宏さんが遠いところに行ってしまった・・・」

と、ショックを受けて寝込んでしまったのですが(笑)、今回の『Page by Page』は
「こういう曲が聴きたかったのよねー」と絶賛しておりました。
いやー、こうして素晴らしいアルバムに出会えると、無性に嬉しくなりますな。

再発盤については後日改めて書かせて頂きます。
(いつになるかは分かりませんが)

    

24:リデンプション

『24 -TWENTY FOUR-』も今年でシーズン7に突入という事で、昨年11月にアメリカで
放送された『24:リデンプション』が今月19日からDVDリリースになります。

『リデンプション』はシーズン6と7を結ぶ2時間のスペシャル放送です。シーズン6で
身も心もボロボロになってしまったジャック・バウアー(キーファー・サザーランド)が、
安息の地を求めてアフリカ・サンガラに隠れ住むも、結局そこでも内戦のゴタゴタに
巻き込まれて闘いに身を投じるハメになる、というお話。

ジャックは捜査活動中の不法勾留や(シリーズ名物の)過剰な拷問が上院で問題に
なったので、アメリカ本国から召喚命令が下っております。
確かにシーズン6もカーティス(ロジャー・クロス)を撃ち殺したり、身内を拷問したり、
ロシア総領事館に乗り込んだり、やりたい放題だったもんなぁ。まぁ、カーティスの件は
アサドとの遺恨絡みでいろいろあったわけですが、容赦なく射殺せんでも・・・ねぇ?

核弾頭も爆発したし、シーズン6はかなりムチャクチャな内容だったような・・・。
(アレはやっちゃいかんでしょ。相変わらず放射能汚染の描写はテキトーだし)

で、話を『リデンプション』に戻しますと、ジャックにその召喚状を持ってくる慇懃な
大使館員トラメル役が『アリー・myラブ』でビリーを演じたギル・ベロウズなんですが、
何か・・・ちょっと見ないうちに随分ルックスが変わったなぁ、と。果たしてあれは
役作りなのか、今のベロウズが素でああいう感じなのか。後者だったらちょっと
悲しいものがあります。

ジャックの友人ベントン役はロバート・カーライル。元特殊部隊員という設定の割には
ちょっと華奢な気もしますが、まぁ相変わらず幸薄そうな感じでいい味出してます。
実際、本編ではやっぱり不幸な展開に(以下略)。

・・・というわけで、今回のエピソードはジャックがいかにして己の罪と向き合い、
過去にオトシマエをつけるのかが重要なテーマになっています。まさにジャックの
「贖罪と救済(=Redemption)の旅」を描いたドラマというわけですな。ストーリー
後半のジャックの「決断」をお見逃しなく。

音楽はTVシリーズ版と同様ショーン・キャラリーが担当。相変わらずビートの効いた
アグレッシヴな音楽を鳴らしてくれます。ただ今回は舞台がアフリカという事で、
民族楽器の音をサンプリングしてスコアの随所で使ってます。なので、いつもとちょっと
違う感じ。TVシリーズの時よりも荒削りな感じの音楽が多いです。

あと、最近の戦争映画のスコアで定番になりつつある「祈りのような女性ヴォーカル」が、
ドラマティックなパートで時々聞こえてきます。『ブラックホーク・ダウン』(01)で言うところの
リサ・ジェラード的役割ですね。

決して『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』(08)の音楽を思い浮かべてはいけません(笑)。
ま、歌っているのは『トロピック・サンダー』と同じリズベス・スコット女史なんですけどね・・・。
何はともあれ、シリーズのファンなら押さえておきたい一品でしょう。

ワタクシも楽しんでライナーノーツを書かせて頂きました。

サントラ盤はランブリング・レコーズから今月18日発売です。

『24:リデンプション』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ショーン・キャラリー
品番:GNCE7046
定価:2,625円

   

ロックンローラ

東京から戻ってきてから、毎年恒例の花粉症の症状が出て来てしまいました。
どうもこの前の東京は花粉の飛散量が多かったらしく、花粉をたんまり
吸い込んで仙台に帰ってきてしまったらしいです。

これから拷問のような日々が続くのだなぁ、と思うとちょっとユーウツです。

ま、それはさておき、先日『ロックンローラ』(08)を観て参りました。

マドンナと結婚してすっかりダメになってしまったガイ・リッチー監督の復活作!
・・・として知られる同作ですが、何だか海外での前評判の割には、日本では
いつの間にか公開日が決まっていて、さしたる宣伝もないままガーデンシネマで
上映されていたような気がします。勿体ないなぁ。面白かったですよコレ。

お話の構成はいつもの通り。ロンドン不動産ビジネスの大金を巡って、マフィアの
ボス・レニー(トム・ウィルキンソン)とその腹心アーチー(マーク・ストロング)、
胡散臭いロシア人実業家(カレル・ローデン)とその会計士ステラ(タンディ・ニュー
トン)、街のチンピラ・ワンツー(ジェラルド・バトラー)とその仲間たち、そしてヤク
漬けのロックスター・ジョニー(トビー・ケベル)がてんやわんやの大騒ぎ(←死語)を
繰り広げるという感じ。

「何の接点もないキャラ同士が、やがて1つの事件で繋がっていくストーリー」、
「複雑にこんがらがったプロットを整理するクールなナレーション」、「ガチャガチャ
したカメラワーク」、「イカす音楽」。もう、やってる事はほとんど『ロック・ストック&以下略』
とか『スナッチ』(00)と全く同じ。

でも、これがいいんですな。だって、マドンナが主演ってだけでアレだった『スウェプト・
アウェイ』(02)とか、カバラ神秘主義にドップリ浸かってヤバ気な出来だった『リボ
ルバー』(05)とか、正直イマイチだったんだもん。「こんなガイ・リッチー映画は観たく
ない!」と誰もが思ったはず。

だから、こうして原点回帰してくれたのは素直に嬉しい。これなら次回作の『Sherlock
Holmes』(09)も期待していいような気がします。

キャストでは、ガキ大将がそのまま大人になったようなジェラルド・バトラーの演技が
なかなかいいですな。『P.S. アイラヴユー』(07)のやんちゃなダメ亭主が更にダメに
なった感じ(笑)。何か、この人が女性ファンに人気がある理由が分かった気がする。
こういうガキ大将っぽいところが母性本能をくすぐるんだろうな、きっと。

あと、マーク・ストロングは最近売れてますね。前日に観た『バビロン A.D.』(08)にも
出てましたよ。『ワールド・オブ・ライズ』(08)とか『リボルバー』にも出てましたしね。
確かにダンディーな感じでカッコいいよなぁ。「細身のアンディ・ガルシア」って感じかな。

サウンドトラックもナイスなコンピレーション。オープニングで派手に流れるBlack Strobeの
「I’m A Man」とか、ジョニーがクラブの用心棒をブチのめすシーンのThe Subwaysの「Rock &
Roll Queen」なんかはアッパーで最高。ワンツーとロシア人2人組のアクション・シーンの
The Hives「The Stomp」からThe Scientists「We Had Love」への流れなんて、映像との
見事なハマりっぷりに脱帽です。笑えるんだけどカッコイイというか。

特筆すべきは、若い頃のジョニーがThe Clashの「Bank Robber」を鏡の前で歌っていて
義父のレニーに折檻されるエピソードですかね。子供なのに選曲が実にシブイ(笑)。
こうしてみると、確かにジョニー・クイドこそ真のロックンローラですな。

未見の方は観ておいて損はないですぞ。

3月17日追記:『ロックンローラ』のサントラ盤は、Universal Musicからリリースになってます(輸入盤)。

    

東京出張

今日は映画『バビロン A.D.』の内覧試写で東京に来ております。

20世紀フォックスさんの試写室は何度も行った事があるのですが、
今日はいつもと違う行き方をしよう! ・・・と思ったところ、
南北線と三田線を乗り間違えてしまいました。我ながらおマヌー。

でも、試写の始まる15分前には何とか会場入り。
まぁ慣れない事はしない方がいいという好例ですな。

映画については、公開時期が近づいたら詳しく書かせて頂きます。
簡単に見所だけ紹介させて頂きますと、

1:K-1戦士ジェロム・レ・バンナとヴィン・ディーゼルのドツキ合い
2:特殊メイクを施したジェラール・ドパルデューの鼻(普段の1.5倍です)
3:シャーロット・ランプリングの女帝っぷり
4:RZAとシャヴォ・オダジアン(シスタム・オブ・ア・ダウン)のユニット
「Achozen」の挿入歌

・・・でしょうか。

え?全然本編と関係ないものばっかりじゃないかって?
ですからまぁ、詳しい事は後日改めてって事で・・・(出し惜しみ)。

ちなみに音楽は『バンテージ・ポイント』(08)のアトリ・オルヴァルッソンが
手掛けております。

そんなわけで、現在ライナーノーツ原稿をホテルにて鋭意制作中です。
ここのホテルはコーヒーが美味なので、部屋で仕事をすりゃいいのに
わざわざラウンジまで足を運んでしまうのです。

明日はレーベル関係の仕事をした後、恵比寿ガーデンシネマで
『ロックンローラ』(08)を観て仙台に帰ります。

   

Out of Noise

教授の新作『Out of Noise』を購入しました。

今回は「フルアートワーク盤」、「パッケージレス盤」、「アナログ盤」、「配信盤」の
4つのリリース形態だったわけですが、ワタクシは無難に「パッケージレス盤」を
チョイスしました。

学生の頃だったら迷うことなく「フルアートワーク盤」を選んだと思うのですが、
以前『Sweet Revenge』と『Smoochy』を初回限定盤で買ったら置き場所に困った、
という思い出があるので、今回はパッケージレス盤にしました。

それに、今月は幸宏さんの新譜『Page by Page』と再発盤でお金を使いそうだったので・・・。

さて本題の『Out of Noise』なんですが、うーん・・・ワタクシにはかなり難解かつ高尚な
感じでした。

commonsのメールマガジンや雑誌の記事などを読んで、大体こういう音楽になるだろう
とは思っていたのですが、想像以上に「ピアノ曲」(『BTTB』とか『トニー滝谷』みたいな
感じ)が少ないなぁ、と。その辺がちょっと意外な気もしました。

commonsmartのサイト内に教授本人の楽曲解説があるので、詳しくはそちらを
見て頂くとして、まぁ今回のアルバムは教授の音楽のコアなファン向きというか、
「家具の音楽(サティ)」、「ミュージック・コンクレート」、「アンビエント」、「ブライアン・イーノ」
というようなキーワードにピンと来た方向けの作品と言えるでしょう。

ワタクシは『音楽図鑑』を教授作品のベストに挙げている人間なので、あのような音楽は
もうやってくれないのかな、と思うと少々寂しくなったりします。

でもHASYMOのライヴで「Tibetan Dance」とか演ってるから、本人もああいうノリは今でも
嫌いじゃないとは思うんだよなぁ。あるいは今の教授の音楽嗜好でああいうサウンドを
やろうとすると、前回の『Chasm』みたいになるのでしょうか。

今回の『Out of Noise』、ワタクシは仕事中のBGMや就寝前のBGMとして楽しんでます。
このアルバムは論理的に「理解」して聴こうとすると(精神的に)相当疲れますが、肩肘
張らずにリラックスして聴くとあら不思議、ピアノ、弦、環境音といった音の層が心地よく
耳に入ってくるではありませんか。

そんなわけで、第一印象の難解さから解放されたワタクシは、現在このアルバムを
仕事場でリピートして聴いている毎日です。